おらが町にジャズのクィンテット(五重奏団)が来た!
地場のスーパーが撤退して以来、久しく空き地になっていた安曇野・池田町の中心部に、今夏、公民館と図書館が合体した交流センター「かえで」が誕生しました。
そのこけら落とし公演として、外タレを招聘。本格的なジャズ・コンサートが開かれるというので、去る9月15日、まだ新築のにおい漂う同センターに行ってきました。
出演するのは、イタリア出身のジャズメン、ロザリオ・ジュリアーニとファブリッシオ・ボッソのクインテット(五重奏団)。
ロザリオ・ジュリアーニは、イタリアの巨匠エンリオ・モリコーネ(「荒野の用心棒」「ニュー・シネマ・パラダイス」)のもとで映画音楽にも携わったベテランのテナー・サックス奏者です。
今回は盟友のトランペッター、ファブリッシオ・ボッソと仲間たちを引き連れ、ジャパンツアーの一環としてここ安曇野にやってきました。
私たちは前売券(全席自由)を購入したのですが、前日になって事務局から「チケットが完売したので、開場時間を30分繰り上げます。お早めにご来場ください」とのメールが届きました。
へぇ、ジャズのチケットがソールドアウトになるなんて、池田町もオサレだなぁ、などと思いながら開場少し前に到着すると、なんと!廊下には良席を狙って順番待ちをする人たちの長い列が…。
一方では、地元の酒蔵・大雪渓さんが無料の利き酒コーナーを開いていたりと、ゆる~い感じもしています。
午後2時の開演で前座を務めたのは、地元・池田町で結成48年!を誇るラテン・ビッグ・バンド「ニュー・スリー・シャープス・オーケストラ」でした。
いやぁ、こんな楽しい社会人オケが地元にあったとは、寡聞にして今日まで知りませんでした。半世紀近い歴史を誇るだけあってなかなかの腕前です。
15分間の休憩を挟んで登場したのが、ロザリオ・ジュリアーニの五重奏団。
初めて見るジュリアーニさんは、ポスターの哲学者然とした感じとはちょっと違って、少し禿げが進んだイタリアのおやじさん、といった印象です。
対照的にトランペッターのボッソさんは長身痩身の刺青男でした。
そこにウッドベースのダリル・ホール(ホール&オーツとは別人)、ピアノのアレッサンドロ・ランツォーニ、ドラムスの江藤良人が加わり、往年のハード・バップ・スタイルのモダン・ジャズをプレイ。
メイン二人のオリジナル曲が中心で、いわゆるスタンダード・ナンバーはアンコールの「イン・ア・センチメンタル・ムード」など2~3曲だけ。少し物足りないセットリストではありましたが、ヨーロッパスタイルの折り目正しい演奏をたっぷりと堪能させてもらいました。
場内は、目算で600人以上の観客で埋まり超満員。年配客に混じって小さなお子さん連れの若い夫婦も結構、目立ちました。
そして何より私たちが胸キュンだったのは、主催者がパンフレットに挟んで配っていたこんなメッセージ。
お客様各位
本日は、稲刈りやお祭り準備でお忙し中、ご来場いただき心よりお礼を申し上げます。当初は果たして集客できるのか、聴きに来てくれるだろうかと大変不安でしたが、多くの新聞に掲載をいただいていた事もあって、お陰様で満席とあいなりました。
そうなんです。安曇野の人たちは今まさに「稲刈りやお祭り準備でお忙し」い最中なんですね。呑気にジャズなんぞ聴きに来ている場合じゃないんですよ。
そんな観客の事情を重々承知している主催者サイドの不安と、満席になった歓びが素直に表れた挨拶状だと思いました。
手作り感溢れる素敵なこけら落とし公演。参加できてラッキーでした。