お向かいの土地は誰のもの? 中部電力がハタと困る
先日、中部電力からこんな電話がありました。
「お宅の敷地に植わっている木の枝が、弊社の電線に掛かっていまして、断線や停電事故の心配があるものですから、よろしければ弊社のほうで枝払いをさせていただきたく、お願いのご連絡を差し上げました」
それはそれはご迷惑をおかけして申し訳ございません、どうぞ伐採をお願いします、と答えて一旦、電話を切ったのですが、しばらくしてまた同じ担当者から連絡が入りました。
「登記簿を調べましたら、お宅の土地かどうかいまひとつはっきりしませんので、確認していただけないでしょうか?」
後ほど地図と現場の写真を送ると言うので待っていたら、翌日、メールが届きました。
見ると、問題の木は私たちの古民家の道を隔てた反対側に生えている大木でした。道の反対側は余所様の土地です。
そこで中部電力に電話をして、私たちの土地じゃないので所有者を探して確認してください、とお願いしました。
誰の土地だかよくわからないというのは、田舎の山林にありがちな話です。
じつは私たちの古民家周辺は、かつてタバコ畑でした。
集落の人たちは、収穫したタバコの葉を刻みタバコに加工して、遠く西日本まで売り歩いたそうです。
その際、取引の“オマケ”として山間の雑木林の所有権を、一坪単位で分筆してプレゼントしたのだとか。
タバコの葉はよく売れましたが、おかげで山の土地が細切れになり、もはや正確に線引きさえできなくなってしまったそうです。
実際、我が古民家の周辺も、以前は地元に縁もゆかりもない四国の人たち数十人の名義に分かれていたようです。
それを前の前の所有者が非常な苦労をして買い戻し、ひとつにまとめたと聞いています。
田舎の土地は摩訶不思議な歴史に彩られていて、電線に掛かった枝払いひとつするのも大変です。