温泉の洗い場で「ケロリン」桶を見つけるとホッとします
温泉の洗い場の壁際に積んである黄色の洗い桶といえば、かの有名な「ケロリン桶」です。
昭和の昔から黄色い桶の底に赤いカタカナで「ケロリン」と書いてありました。
デザインも色も桶の形も昔とぜ~んぜん変わらないんだな…と思っていたら、なんと初代(1963年)のケロリン桶は白色だったそうです。ケロリンの製造販売元・内外薬品のサイトにそう書いてありました。
でも、白では湯垢の汚れが目立つため、途中から黄色いボディ色に改められたのだとか。なるほどねぇ。
ケロリン桶がデビューした当時の日本の銭湯では、一般に木製の洗い桶が使われていました。ただ、木桶は不衛生だし壊れやすいということで、この時期、プラスチック製に置き換わりはじめたのだそうです。
そこに目をつけたのが、睦和商事という広告会社の営業担当マン。みんなが利用する銭湯の洗い桶の底に商品名を印刷しておけば大勢の目に留まる…と考えて、内外薬品に売り込んだのだそうです。
まだ内風呂が普及していない時代。銭湯の洗い桶の底は、テレビにも匹敵する媒体価値を持っていたのですね。
内外薬品は、睦和商事の提案を受け入れ、各地の銭湯や温泉場に商品名入りのプラスチック製洗い桶を提供していきました。
かくして全国の洗い場に、あの黄色のプラスチック桶が行き渡ったというわけです。
ちなみに、この時の睦和商事の営業マンは、その後、出世して同社の社長まで上り詰めたそうです。これも内外薬品のサイトに書いてありました。
睦和商事は最盛期には年商1億3000万円を上げていたようですが、公衆浴場向けの需要が落ち込むとともに経営不振に陥り、2013年に倒産してしまいました。
その後、ケロリン桶の製造販売は内外薬品が引き継ぎ、現在に至っている模様です。
…とまあ、そんなこぼれ話にも長い歴史を感じさせるケロリン桶ですが、安曇野周辺の温泉地では今も日帰り温泉施設でちらほら見かけます。
写真は大町市の葛温泉(くずおんせん)高瀬館の内湯で見つけたケロリン桶。もうもうと立ち込める湯煙を透かして黄色の桶を見ていると、妙な懐かしさを感じます。
今時、おしゃれなスパ・リゾートには絶対に置いていないでしょう。
もはや古ぼけてダサいだけのケロリン桶かもしれませんが、これで湯を浴びると絶対、湯冷めしないような気がするから不思議です。