酒蔵・大雪渓の再生古民家を見学しました
我が古民家の地元・池田町に、明治31年創業の「大雪渓酒造」があります。老舗の蔵元です。
数年前から前を走る県道の拡幅工事が始まり、同社の敷地内に建つ古民家が立ち退きの対象になってしまいました。
件(くだん)の古民家は、酒造りの職人が住んでいた築150年の町屋で、過去30年ほど空き家になっていたそうです。
解体して更地か?…しかし、蔵元が選択したのは移築・再生でした。
古民家再生でよくあるのは、古い家屋を一旦、バラし、別の場所に新たに組み立て直す手法です。
ですが、大雪渓酒造さんが選んだのは「曳家(ひきや)」と呼ばれる伝統技法。骨組みを解体せずに建物の形を保ったまま移動する方法でした。
重さ100トンを超えようかという2階建ての家屋をジャッキで吊り上げ、レールとローラーを敷いて東へ4m、南へ1m、移動したそうです。
その後、漆喰や内装をすべて整え直し、この春、オフィス兼ショップとして仮オープンしました。
先日、開いたばかりのショップにお邪魔しました。
我が家と同じ吹き抜け天井で、大きな土間の一部を商品の陳列コーナーに充てています。
許可をいただいて座敷に上がりました。
1階には十畳の和室が数部屋。天井から壁、畳、建具に至るまで、一点一点がていねいに再生され、洗われたようにきれいに設(しつら)えられています。
衝立(ついたて)などの調度品も磨き上げられ、まるで新築そのもの。
いはやはや、一分の隙もない見事な再生古民家ではありませんか。
山里のオンボロ百姓家を数年がかりでリフォームした私たちからすれば、まさに垂涎の的。古いものを残そうという蔵元の“本気”がひしひしと伝わってきます。
安曇野の伝統家屋を再生してくださった蔵元・大雪渓酒造の心意気に深く感銘を受けた次第です。
直営ショップは7月初旬にグランドオープンの予定だそうです。正式オープン後は、清酒以外にスイーツなども置かれるそうで、新たな観光スポットがまたひとつ、安曇野に誕生することになります。
私たちも一足先にショップで新酒を買って帰りました。今夜は古民家を肴にうまい酒が飲めそうです。