田舎暮らしは千客万来
以前、「昼下がりには、ご近所のお年寄りがふらりとやってきて縁側に腰掛け、茶飲み話に花を咲かせていきます。縁側は肩肘の張らない、気のおけない場所で、みなさん遠慮なく立ち寄ってくださいます。」(内でも外でもない。「縁側」は不思議な空間です)と書いたことがあります。
それから数年がたちましたが、我が家には相変わらず、いろいろな方がいらっしゃいます。
最近、増えてきたのが通りすがりのおじいさん、おばあさんの来訪です。
軽トラや乗用車を我が家の前に横付けして、ぶらりと玄関に姿を現します。
聞けば隣町や隣村の方たち。
「山菜を採りに来た」
「友人を訪ねた帰り」
などなど事情はさまざまですが、私たちにとっては初対面の人たちばかりです。
特に用があるというわけではなく、我が家(古民家)を見ているうちに何となく寄りたくなった…というのです。
数日前に軽トラから降り立った80歳のおじいさんは、隣の大町市のお百姓さんでした。
近くの毘沙門天さんを拝みに立ち寄った帰りに、ふと我が家が目に止まったというのです。
「こんな立派な家を大事にしてくれるというのは、ほんとに尊いことだわ」
と、わけもなく褒められ、こそばゆい思いをしました。
あまり褒めてくださるので、家の中にお招きしてこのあたりの昔話をとっぷり聞かせていただきました。
どうも年配の方々には、この家の古色蒼然とした佇(たたず)まいが、なにやら「ゆかしげ」と申しましょうか、郷愁を誘うらしいのです。
ひょっとすると我が家には、人を呼ぶ“気”のようなものがあるのかもしれないな…と、そんなことさえ思い始めました。