夢二の絵ハガキは漆喰壁にぴったりでした
私たちの家の内装は、漆黒の太い柱に白い漆喰壁という、伝統的かつシンプルな要素でできています。障子や襖などの建具を取り払ってしまうと、柱と板と白壁に囲まれた空間です。天井は藁葺き、床は畳または板敷きまたは土間。かなりモノトーンな世界です。
白壁の面積が広いので、絵でも掛けようかという話になりました。原色の巨大な油絵など飾ると映えそうですが、天井から煤が少しずつ剥がれ落ちてくるので、すぐに表面が汚れてしまいそうです。
小さくてもいいからガラスの額縁に収まったものを、と考えていたところ、金沢へ旅した折りに竹久夢二の可愛い絵ハガキを見つけました。
黒い額縁に入ったモノトーンの版画(安い複製品)です。
夢二といえば美人画が有名ですが、童話雑誌の挿絵を描いたり、童謡をモチーフにした絵ハガキを作ったりと、結構、子供の絵を残しているんですね。
この版画は、和服姿の女の子が3人、鬼ごっこでもしているものでしょうか。
さきほど「可愛い」と書きましたが、「キモかわいい」と言ったほうがぴったりかもしれません。真ん中の女の子の背筋がヘンに折れ曲がり過ぎていたり、唯一表情の伺える子が取ってつけたような笑みを浮かべていたりと、よくよく眺めるとムズムズ居心地が悪くなってきます。不思議な作品です。
そのせいか、この絵ハガキは土産物店の壁の隅っこのほうに、押しやられるようにして掛かっていました。店員さんに聞くと、数年前からそこにぶら下がったまんまとのことでした。
この不思議さはなんだか我が家に似合いそうだなと思い、500円で買って帰りました。
ダイニングルームの漆喰壁に掛けてみたのが、この写真です。なかなか良い感じで白壁の引き立て役になりました。
ちなみに、絵ハガキを額から出して裏面を見ると、薄い朱色で次のような童謡が印刷されていました。
草履かくし象蓮寺
九年坊十年坊
深い川へはめようか
浅い川へはめようか
同じことなら血の池へ
どんぶりこっこ
どんぶりこ
どなたか鬼になったとて
かならずお腹はたてやるな
夢二の書いた詩でしょう。ただし、題名はわかりません。夢二の『日本童謡撰 あやとりかけとり』(1922年)という作品集の「遊戯唄」の中には、
深い川へはめよか、
浅い川へはめよか、
おなじことなら深川へ。
どんぶらこつこ、どんぶらこ。
という、よく似たフレーズが出てくるので、あるいはこの時代の創作かもしれません。
どなたかご存じの方がいらっしゃったら、教えてください。