一級の源泉掛け流し。中房温泉「湯原の湯」
安曇野一の秘湯といえば、中房温泉(なかぶさおんせん)です。
北アルプスの燕岳への登山口、標高1462メートルの山奥に湧く良質の硫黄泉で、麓の穂高温泉郷もじつはここから引き湯しています。
穂高温泉郷からクルマで10キロほど上るのですが、一本道の県道327号線が途中で1車線の隘路になるため、観光シーズンは上り下りの車両が角突き合わせて立ち往生…なんてことも起こります。運転初心者にはお勧めできないドライブコースです。
それはともかく、例年10月下旬に紅葉の見頃を迎える中房温泉に、紅葉狩りを兼ねて行ってきました。
中房温泉は完全な“野中の一軒宿”です。わりに最近まで、宿泊客と登山者以外にはお風呂を開放していませんでした。
2006年に日帰り温泉「湯原の湯」がオープン。私たちは、この露天風呂オンリーの「湯原の湯」に立ち寄らせてもらいました。
燕岳への登山口のちょうど入口付近に「湯原の湯」は建っています。総天然木造りの山小屋風の建物で、脱衣所も山小屋そのもの。服を脱ぎ、ガラガラと木戸を開くと、大小ふたつの湯船が並んでいます。
大きいほうが熱い湯、小さいほうがぬるま湯です。
どちらも源泉は93度と高温で、これを加水することなく敷地内のタンクへポンプで900メートル引き揚げ、自然冷却して適温にしています。
つまり正真正銘の源泉掛け流し。湯船に浸かった瞬間、「あ、トロトロだ…」という言葉が口を突いて出るほどの滑らかなお湯です。
源泉掛け流しをうたう温泉は少なくありませんが、ここの湯は間違いなく一級品。すべすべ、トロリとした感触がたまりません。
透明湯で、わずかに硫黄のニオイが漂います。白い湯ノ花が湯船を浮遊しています。
その湯船をぐるりと取り囲むように、紅葉した山々が眼前に迫っています。まさに秘湯と言うにふさわしい恵まれた自然環境です。
こぢんまりした洗い場は清潔で、湯に入ったり上がったりを繰り返して長い時間、ゆったりと過ごせます。理想的な露天風呂と言っていいでしょう。
入浴料は700円。安曇野周辺の本格露天風呂としては大町市の葛温泉・高瀬館と双璧をなす中房温泉に、すっかりハマってしまった私たちでした。
【中房温泉】