囲炉裏とIHヒーターを行き来する南部鉄瓶は“時の旅人”?

囲炉裏といえば自在鉤、そして自在鉤の先にぶら下げるのは鍋か鉄瓶(てつびん)と相場が決まっています。
私たちも、壊れかけた囲炉裏を再建後、真っ先に探したのが黒光りする鍋と鉄瓶でした。
鍋は、使い潰すつもりでホームセンターで木蓋付きの安物を購入しました。使い勝手がよくて、毎日のように愛用しています。
一方、鉄瓶は「やっぱ南部でしょう」ってことで、南部の鉄瓶を探しました。
ところがところが。“南部鉄瓶”というのは(あたりまえの話ですが)大層立派なブランドでして、小ぶりなものでも平気で2~3万円するんですね。
ひとつひとつが熟練工の手作りだってことはわかります。砂を固めた鋳型に文様をかたどり、溶かした鉄を流して作っているってことも聞いてます。仕上げに漆を焼き付けて、あの独特の漆黒の色合いを出しているっていうのも、考えてみれば大した手間です。
しかし、日々、湯を沸かすのに使うヤカンに2万も3万も投じるのはナンだなぁ…と、ついついケチ臭いことを考えてしまいました。
そんな時に便利なのがヤフオクです。調べてみると、結構いろんな鉄瓶が出品されていることに気がつきました。
錆だらけでガラクタ同然のものもありますが、根気よくチェックしていくうちに、新古品の「宝珠形 霰鉄瓶」というのを見つけました。
出陳者のコメントには、「南部盛榮堂製で未使用」と書いてあります。
オークション開始価格は1000円。見つけたときすでに数日が経っていましたが、他にも鉄瓶が多数、出品されていたせいか入札は低調で、3900円で落札できました。

届いたのが写真の鉄瓶です。外径は18センチ弱で、底径は9センチあまり。我が家の大きな囲炉裏に吊るすと何だかミニチュアっぽく見えますが、あっという間に湯が沸くので、じつはこれぐらいがちょうど使いやすいサイズなんだと知りました。
意外だったのは、キッチンのIHクッキングヒーターでも使えたことです。使えるどころか、IHと鉄瓶の相性は非常に良いことにびっくりしました。

クッキングヒーターの上に水をたっぷり入れた鉄瓶を載せて最強モードでスイッチを入れると、ものの2分で注ぎ口から熱湯が噴き出します。
嬉しいことに鉄瓶の蔓(つる)は中か空洞になっているらしく、熱が伝わらないので素手で握っても大丈夫なんですね。
鉄瓶で沸かしたお湯には鉄分が溶け込むそうで、とてもまろやかな口あたりになります。緑茶、紅茶、烏龍茶、コーヒー、そして焼酎のお湯割りが、ぐんとおいしくなったような気がします。
というわけで、我が家の「宝珠形 霰鉄瓶」は、目下、囲炉裏とIHヒーターという新旧両極端の調理器具の間を、あたかも“時の旅人”のように行ったり来たりの大活躍です。



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