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古民家の寒さと『源氏物語絵巻』の深い関係!?

 今年もまた、朝晩にそぞろ寒さを感じる季節になりました。

 「芯から冷える」という言葉がありますが、我が家はまさに“そのクチ”で、これからの時期、ほとんど嫌がらせなんじゃないかと思えるほど冷え冷えとしてきます。

 以前、「なぜ昔の人は『冬、暖かい家』を造らなかったのだろう?」という項にも書いたように、私たちのご先祖様は、どうしてまた、ことさら冬に寒い構造の家を建てたりしたのでしょうか。解けないギモンです。

 ところが、先日、民俗学者・宮本常一の『塩の道』という本を読んでいたら、その答えといいましょうか、ヒントになる一節が見つかったので、ちょっとご紹介しておきたいと思います。

 宮本さんによると、私たちの祖先は南方からはるばるやってきて、日本列島に定住したのだそうです。

 その際、南国の開放的な住まいをそのまま北国である日本に持ち込んだというわけです。

 開放的な住まいを日本で実践しようと思うと、ずいぶん寒かったのではないか、そしてそれを思わせてくれるのが『源氏物語絵巻』だというのです。

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『源氏物語絵巻』を見ていきますと、あのじつに華やかに描かれているその絵の中で、男も女もじつにみごとな着ぶくれをしています。あれは寒かったら着ぶくれしているのです。寒くなかったらあんな着ぶくれはしない。こんどはみなさん方はその着ぶくれをしたのが美しいというのです。そういう目に馴らされてしまっているということです。

 あの当時、寒さを防ぐために何があっただろうということになると、絵巻で見るかぎり御簾(みす)を垂らしています。御簾の裏側へもっていって壁代(かべしろ)という、布を垂らしています。これくらいで寒さを防いでいるのです。そういう中で人が生きていこうとしたら、これは着ぶくれしなければどうしようもなかっただろうということはわかります。(宮本常一『塩の道』III 暮らしの形と美(講談社学術文庫)



 そのうえで、宮本さんは平安の文化を「貴族が寒さに耐えた文化であった」といって差し支えないだろうと書いています。

 なるほど! 日本の伝統家屋の寒さは、南の島の「高床式」を、気候を無視してそのまま北の大地に持ち込んだために生じたというわけなのですね。

20111121002.jpg
我が家の床下。たしかに「高床式」です

 光源氏や葵上や紫の上や花散里が雅(みやび)な重ね着をしている本当の理由は、美の追求なんかじゃなくて、ただもう寒さをしのぐための“着ぶくれ”だったというのです。

 我が家でも真冬には何枚も家の中で重ね着をして生活しています。幸いヒートテックのような21世紀のテクノロジーのおかげで、重ね着してもブクブクにはなりませんが。

 要は自分たちを平安貴族の末裔と思えばいいだけの話なのですね。

 …ま、そう思うと、冬の寒さに立ち向かうほんの少しの勇気が湧いてくるような気も、しないではありません。

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プロフィール

あづみ

Author:あづみ


都会から安曇野の古民家に親子3人で移住しました。夏涼しく、冬は想像を絶する寒さですが、ハラを括って暮らせば何とかなるものです。

その後、縁あって畑付きの田舎家をゲット。現在は山中の古民家と里の家とを行き来する日々です。

安曇野に興味のある方、また古民家に暮らしたいと思っていらっしゃる方、よろしかったらお立ち寄りください。

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