古民家の階段はどうして急勾配なんだろう?
二階建ての古民家に上がったことのある方ならご承知と思いますが、昔の家屋というのは、とにかく階段の勾配がきついんですよね。
分度器を当てて測ったことがないので正確にわかりませんが、実感値としては現代の戸建てに比べて2~4割程度、急傾斜になっている気がします。

我が家の階段です
現代の建物は「建築基準法施行令」という法律によって、幅75センチ以上、踏面(ふみづら=ステップ部分の奥行き)15センチ以上、蹴上(けあげ=段差)23センチ以下と決められています。
ただし、この規定ギリギリに作ると斜角56度という相当な急階段ができあがってしまうため、実際には踏面24センチぐらい、蹴上18センチぐらいで施工するのだそうです(斜角36度程度)。
また施工の際には、手すりの設置も義務付けられています。
振り返って我が家の階段を見てみると、幅こそ75センチ以上ありますが、踏面は狭いは蹴上が高いは手すりは無いは…まさに“アンチバリアフリーの権化”のような拵(こしら)えです。
引っ越し当初は昇り降りが怖くて仕方ありませんでした。今は歩き方のコツを掴んだのでさほどではありませんが、それでも夜間やほろ酔い気分の時には利用しないように心がけています。

階段の前に立つと壁のようです
一体、昔の人はどうしてこんなに階段を急勾配にしつらえたのでしょうか?
ものの本には、日本家屋にとって二階は“添え物”に過ぎず、利用頻度が低かったため階段スペースを極力、狭くして一階の有効利用を図った、なんてことが書いてあります。
でも、本当にそうなのでしょうか?
たとえば我が家。今でこそ二階はあまり使っていませんが、かつては立派な本床を備えた十畳間がふたつ、ど~んと控えていました。
最初は客間として、その後、養蚕が盛んになってからは二階に蚕棚を置いて“お蚕(かいこ)”部屋として大いに活用したようです。
当然、家人は階段を頻繁に昇り降りしたはずです。両手に荷物を抱えて駆け上ったり、下ったりしたにちがいません。よくまあ、足を滑らせなかったもんだと感心するばかりです。

2階お踊り場から見下ろしたところ
我が家のような百姓家ばかりではありません。先日、泊まった大妻籠の築150年以上の宿屋・丸屋さんの階段も、それこそ奈落に落ちるような急傾斜でした。
丸屋さんは江戸時代の旅籠の建物を大切に使っていらっしゃいます。旅籠にとって階段は旅人を客室に案内するのに必須の存在です。導線上の“大動脈”といってもいいと思います。
それが思わずヒヤリとさせられる急勾配なんですから、不思議としか言いようがありません。

丸屋さんの階段。我が家とまったく同じ急勾配です
あえて言うならば、昔の日本人は「急な階段のほうがいい」と本気で思っていたのではないでしょうか?
階段をめぐるこの日本人の嗜好については、改めて考えてみたいと思います。

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分度器を当てて測ったことがないので正確にわかりませんが、実感値としては現代の戸建てに比べて2~4割程度、急傾斜になっている気がします。

我が家の階段です
現代の建物は「建築基準法施行令」という法律によって、幅75センチ以上、踏面(ふみづら=ステップ部分の奥行き)15センチ以上、蹴上(けあげ=段差)23センチ以下と決められています。
ただし、この規定ギリギリに作ると斜角56度という相当な急階段ができあがってしまうため、実際には踏面24センチぐらい、蹴上18センチぐらいで施工するのだそうです(斜角36度程度)。
また施工の際には、手すりの設置も義務付けられています。
振り返って我が家の階段を見てみると、幅こそ75センチ以上ありますが、踏面は狭いは蹴上が高いは手すりは無いは…まさに“アンチバリアフリーの権化”のような拵(こしら)えです。
引っ越し当初は昇り降りが怖くて仕方ありませんでした。今は歩き方のコツを掴んだのでさほどではありませんが、それでも夜間やほろ酔い気分の時には利用しないように心がけています。

階段の前に立つと壁のようです
一体、昔の人はどうしてこんなに階段を急勾配にしつらえたのでしょうか?
ものの本には、日本家屋にとって二階は“添え物”に過ぎず、利用頻度が低かったため階段スペースを極力、狭くして一階の有効利用を図った、なんてことが書いてあります。
でも、本当にそうなのでしょうか?
たとえば我が家。今でこそ二階はあまり使っていませんが、かつては立派な本床を備えた十畳間がふたつ、ど~んと控えていました。
最初は客間として、その後、養蚕が盛んになってからは二階に蚕棚を置いて“お蚕(かいこ)”部屋として大いに活用したようです。
当然、家人は階段を頻繁に昇り降りしたはずです。両手に荷物を抱えて駆け上ったり、下ったりしたにちがいません。よくまあ、足を滑らせなかったもんだと感心するばかりです。

2階お踊り場から見下ろしたところ
我が家のような百姓家ばかりではありません。先日、泊まった大妻籠の築150年以上の宿屋・丸屋さんの階段も、それこそ奈落に落ちるような急傾斜でした。
丸屋さんは江戸時代の旅籠の建物を大切に使っていらっしゃいます。旅籠にとって階段は旅人を客室に案内するのに必須の存在です。導線上の“大動脈”といってもいいと思います。
それが思わずヒヤリとさせられる急勾配なんですから、不思議としか言いようがありません。

丸屋さんの階段。我が家とまったく同じ急勾配です
あえて言うならば、昔の日本人は「急な階段のほうがいい」と本気で思っていたのではないでしょうか?
階段をめぐるこの日本人の嗜好については、改めて考えてみたいと思います。



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