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「水」の字の鬼瓦は見ていた!

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 我が家の床の間には「」という字を描いた古い瓦が飾ってあります。以前、この家にあった蔵の屋根に付いていたものです。

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 蔵を火災から守るために、屋根の両端の鬼瓦にはしばしば「水」の文様が描かれたといいます。この瓦も家の守護神として、蔵のてっぺんで長年、大切な家財を火の魔の手から守り抜いてきたのでしょう。

 しかし、私たちが引っ越してくる二十年以上も前に道路の拡張工事があり、拡張エリアに引っかかった蔵はあっけなく取り壊されてしまいました。

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ご近所の古民家の土蔵に残っていた「水」の鬼瓦。
こんなふうに使われていたんだと思います


 残ったのは「水」の字の刻まれた鬼瓦2枚だけ。崩落しかけた濡れ縁の下敷きになっているのを見つけて、家の中に運び込んだのでした。

 タワシでこびりついた泥を拭い、四隅が欠けていない1枚を失われた蔵の“形見”として床の間に飾ってみました。威風堂々としていて、殺風景だった床の間に重みが加わりました。

 ある日、この家の前々オーナーさんが前触れもなく訪ねてきました。前々オーナーである元・地主さんは床の間に瓦を見つけると、

 「ひやぁ~」

 声にならない声を上げて、しばらく見入ったまま絶句したのです。

 「あの蔵があるうちは、何としてもこの家は手放すまい、がんばろうとしたんだけれどね。蔵が壊されてしまって、もうダメだ、もうここにはいられない、全部手放すしかない、と悟ったんだよ……」

 と、感に堪えない口調でそう語ったのでした。

 隣で聞いていた私は、彼の心中を慮る一方で「おや?」と一片のギモンを感じました。

 道路の拡張工事で取り壊されたのは土蔵であって、母屋じゃなかったはずでは?

 仮に母屋が壊されて土蔵だけ残ったのであれば、

 「もうダメだ、もうここには暮らせない……」

 と思う気持ちはよく理解できます。でも、母屋は元のままの姿で残っているわけで、多少、不便にはなるかもしれませんが暮らし続けることはできたのでは?……そう思ったのです。

 一体、どういうことだろうと理由を尋ねてみて、びっくり。

 「いやぁ、わたしらは幼い頃から土蔵暮らしだったからねぇ……

 何とも意外な答が返ってきました。土蔵暮らし! なるほど!

 しからば、この大きな母屋にはどなたが?

 「お蚕(カイコ)さんだねぇ

 お蚕さん!

 養蚕農家だった元・地主さんのお宅では、貴重な現金収入を生み出す蚕と家畜を母屋に優先的に住まわせ、人間様は隣の土蔵で暮らしていたというのです。

 ようやく謎が解けました。元・地主さん一家は養蚕業の凋落で現金収入の途を閉ざされたばかりでなく、それに追い打ちをかけるように道路工事が決まってしまって住む家も失い、もはや山里に暮らせなくなった……ということだったのです。

 それにしても、カイコに家を奪われ、道路に土蔵も奪われるとは……山里に押し寄せた近代化の非情な波の一端を図らずも見せつけられたのでした。


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はじめまして。
『キラリ館ブログキング』と申します。
ご訪問いただければ幸いです。

なっ、なんと!!

なっ、なんと!!!!(゜д゜lll)
土蔵に人が暮らしていたのですね。
土蔵=もの、母屋=人、という単純な考え方ではダメですね。
しっかし、驚きました!!!

teichancomさま

こんにちは。

そうなんです。私も常識がガラガラと音をたててひっくり返りました。

ところが、ご近所で話を伺うと、
蚕に母屋を取られる、というのは
それほど珍しい話でもなかったらしいのです。

いやはや、驚きました。
プロフィール

あづみ

Author:あづみ


都会から安曇野の古民家に親子3人で移住しました。夏涼しく、冬は想像を絶する寒さですが、ハラを括って暮らせば何とかなるものです。

その後、縁あって畑付きの田舎家をゲット。現在は山中の古民家と里の家とを行き来する日々です。

安曇野に興味のある方、また古民家に暮らしたいと思っていらっしゃる方、よろしかったらお立ち寄りください。

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