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天蚕(てんさん)を育ててみたくてクヌギの苗を植えました

 安曇野の名産品といえば、一にワサビ二にワサビ、三四がなくて五にワサビ。ワサビがその名を全国に轟かせています。観光名所としても壮大なワサビ田が定番です。

 ただその陰にあって「天蚕(てんさん)」というもう一つの名産品の存在は、ほとんど知られていません。

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 天蚕…天然のカイコのことですね。生糸を作る野生のカイコの一種で、ヤママユガという蛾の繭から採取される希少な糸です。

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 ヤママユガは全国の山野に生息する蛾ですが、養蚕用に飼育される一般のカイコ--家蚕(かさん)と言います--に比べて飼育が難しく、採れる糸の量も限られているため、養蚕にはなじまないとされてきました。

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 でも、天蚕の黄緑の繭から採れる糸は萌黄色の独特の光沢を持ち、家蚕の絹に比べて一段と軽くしなやです。また織物にしたときに皺になりにくいなど、その美点についてははやくから知られていました。

 極細の糸は内部に空気をたっぷり蓄え、保温性も群を抜いています。

 さらに家蚕糸に比べて染料を吸着しにくい性質があり、家蚕糸と混織し後染めすると微妙な濃淡が生まれる点も珍重されてきました。

 天蚕には育てにくさを補って余りある独自の魅力が詰まっていたんです。

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 そんな天蚕の人工飼育を全国に先駆けて始めたのが、ここ安曇野の穂高有明地区でした。今からおよそ240年前にヤママユガを使った独自の養蚕がスタートして、最盛期の明治20~30年代には、年間800万粒の繭が生産されていたと言います。

 現在はごく限られた農家さんが伝統を絶やすまいとヤママユガの飼育を細々と続けています。

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 ご縁があって天蚕の飼育場から目と鼻の先に移住した私たちとしても、この“裏名産品”の素晴らしさを全国に広く知っていただきたい。そんな思いから、天蚕を使ったショールなどのプロダクト開発を進めています。

 天蚕はクヌギの葉っぱを食べて育ちます。家蚕(一般のカイコ)は桑の葉っぱが食料ですが、ヤママユガは桑には目もくれず、カブトムシやクワガタに混じってクヌギの木に集まり、卵を産み付けるんですね。

 私たちも天蚕を卵から育てて糸を採ってみたいと思うようになりました。

 クヌギの苗は普通の園芸店では扱っていません。建材やシイタケ栽培のホダ木、薪や木炭の原料になる木ですから市販はしていないんですね。

 そこで地元の山林組合に「天蚕を育てたいんですけど…」と連絡したら、高さ1メートル50センチほどの苗を分けてくれました。

 1苗1000円。とりあえず6苗購入して2メートル間隔で植栽したのがこちら。

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 森に生える木ですから肥料をやる必要はありません。保湿のため足元にウッドチップを撒き、水をたっぷり与えておしまい。

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 葉っぱが茂るまで数年かかるので、気長に生長を待ちます。

 天蚕の卵を付ける日が今から楽しみです。

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テーマ : 信州
ジャンル : 地域情報

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クヌギ

長い年月をかけての計画って素敵ですね。
(戦争と異常気象無しを祈りたい)
それらをも乗り越えて行けるのが、大自然の力かもですねぇ。

Re: クヌギ

ありがとうございます。
ホントに大自然の力を信じるということだと思います。
プロフィール

あづみ

Author:あづみ


都会から安曇野の古民家に親子3人で移住しました。夏涼しく、冬は想像を絶する寒さですが、ハラを括って暮らせば何とかなるものです。

その後、縁あって畑付きの田舎家をゲット。現在は山中の古民家と里の家とを行き来する日々です。

安曇野に興味のある方、また古民家に暮らしたいと思っていらっしゃる方、よろしかったらお立ち寄りください。

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