リンゴ畑の写真を撮ってドロボー呼ばわりされた話
先日、リンゴのもぎ取り体験に行った話を書きました(→初なりリンゴのもぎ取り体験に出かけました)。
残念なことに「初なり」リンゴはすでに全量もぎ取られた後でしたが、農園さんの粋な計らいで採れたてのリンゴ2個を(残念賞として)お土産に頂き、幸せな気分で家路に就いたのですが...。
走り出して間もなく、道路沿いにもうひとつ別の観光農園の看板が目に入りました。
直売所でしょうか。通りを隔てた向かいの畑には赤いリンゴの実が鈴なりになっています。
路肩にクルマを停めて、カメラ片手に舗装道に立ちました。
葉をすっかり落としたリンゴの木立に、真っ赤な実が点綴しています。背景には紅葉した安曇野の山。深まる秋の心和む風景を写真に収めようと思い、その場でパシャパシャとシャッターを切っていると、側道の奥から軽トラが音もなく近づいてきました。
「おめぇ、何、写真なんか撮ってんだよ。ここ誰の土地だと思ってんだ。勝手に人の土地に入って写真なんか撮るな!」
突然、サングラスをかけた五十がらみのオヤジが、運転席から身を乗り出さんばかりにして怒鳴りはじめたんです。
人の土地? いやいや、ここは公道。リンゴ畑の写真を撮影しているだけです。何を因縁付けているのでしょうか。
美しい紅葉を背景に、きれいなリンゴの写真を撮らせてもらっていただけですよ、と言うと、
「きれいな写真を撮ってもらうために作ってるんじゃねえ。こんなところで写真撮ってたらドロボーと疑われるに決まってるだろ!紛らわしいんだよ。それが常識ってもんだろうが?わからねぇのか?」
わかりません。わかりませんが、軽トラオヤジは凄い権幕で絡んできます。
行き交うクルマの運転席からも、不思議そうな視線が集まりはじめました。
「おまえ、私有地にズカズカ入り込んでいるじゃねえか」
オヤジは私有地への不法侵入?をひたすら言い募ります。
「いえ、この舗装道は一般道でしょ? ここから畑にカメラを向けていただけですよ」
「うるせえ。立入禁止の看板が目に入らねぇのか!」
看板?あたりを見回しましたが、立っているのは「一時停止」の交通標識だけです。
「公道で写真を撮って何が悪いんです?」
「リンゴ泥棒がそうやって盗んでいくんだよ。わからねえのか!」
「私は泥棒じゃありませんけど」
「うるせえやつだな。なら警察呼ぼうか」
「ええ、ぜひ警察を呼びましょう」
こちらもドロボー呼ばわりされては引き下がるわけにはいきません。大体、土曜日の昼下がりに、クルマが絶えず行き交う幹道で堂々と路肩のリンゴを盗むヤツがいるでしょうか?
しかし、軽トラオヤジの興奮は一向に収まる気配がありません。
「センサーが鳴ったんだよ。おめえが畑に入ったから鳴ったんだろうが」
「あのねぇ、私は畑には一歩も入っていないんですよ。センサーが道にいる私を感知したんじゃありません?」
「そんなわけはねぇ」
「じゃ、今、撮った写真をお見せしますよ。ほら、これとこれとこれ。わかります?全部、この道路から写したものでしょ。それでも疑うんだったら、今すぐ警察に来てもらいましょうよ」
一眼カメラのモニターにリンゴ畑の写真を1枚ずつプレイバックしてみせると、ようやくオヤジはトーンダウン。
「あんたが悪い人じゃないってのは、わかったよ。ただ、昨夜もここでごっそり盗まれたんだ」
「素人目にはたくさん実が付いてますけどね」
「実があるのは上半分だろ? 手が届く下半分をやられたんだよ」
言われてみれば、たしかに木の下のほうは実がまばらな感じもしますが...。
どうやらこのオヤジ、日夜繰り出すリンゴ泥棒に手を焼いて相当ナーバスになっているらしいんですね。
それにしても、ただ写真を撮影しているだけの人間をつかまえて、問答無用でドロボー呼ばわりはないでしょう。
呆れて言い返す気にもなれません。というより、こんなことでカッカしているオヤジが哀れに思えてきました。
「私はね、あなたが一生懸命作っているリンゴが高く売れて、あなたが儲かってくれたら嬉しいですよ。おいしいリンゴができたら買わせてもらいますから」
同情すら覚えてそう言うと、
「あんたが悪い人じゃないのはわかってんだよ」
ごめんとは言わずにそう繰り返して、最後には、
「これ、持ってけ」
さっき、通りすがりの泥棒に盗まれていると言っていた低い位置のリンゴを3個、鷲掴みにして枝から引っ剥がし、乱暴に手渡すんですね。お詫びのつもりなのでしょう。
こちらが、そのリンゴ。
ドロボー呼ばわりの“対価”を貰うのはイヤでしたけど、それでオヤジの気が収まるならと黙って受け取りました。
軽トラオヤジの観光農園、こんな態度で大丈夫なんでしょうかね?
残念なことに「初なり」リンゴはすでに全量もぎ取られた後でしたが、農園さんの粋な計らいで採れたてのリンゴ2個を(残念賞として)お土産に頂き、幸せな気分で家路に就いたのですが...。
走り出して間もなく、道路沿いにもうひとつ別の観光農園の看板が目に入りました。
直売所でしょうか。通りを隔てた向かいの畑には赤いリンゴの実が鈴なりになっています。
路肩にクルマを停めて、カメラ片手に舗装道に立ちました。
葉をすっかり落としたリンゴの木立に、真っ赤な実が点綴しています。背景には紅葉した安曇野の山。深まる秋の心和む風景を写真に収めようと思い、その場でパシャパシャとシャッターを切っていると、側道の奥から軽トラが音もなく近づいてきました。
「おめぇ、何、写真なんか撮ってんだよ。ここ誰の土地だと思ってんだ。勝手に人の土地に入って写真なんか撮るな!」
突然、サングラスをかけた五十がらみのオヤジが、運転席から身を乗り出さんばかりにして怒鳴りはじめたんです。
人の土地? いやいや、ここは公道。リンゴ畑の写真を撮影しているだけです。何を因縁付けているのでしょうか。
美しい紅葉を背景に、きれいなリンゴの写真を撮らせてもらっていただけですよ、と言うと、
「きれいな写真を撮ってもらうために作ってるんじゃねえ。こんなところで写真撮ってたらドロボーと疑われるに決まってるだろ!紛らわしいんだよ。それが常識ってもんだろうが?わからねぇのか?」
わかりません。わかりませんが、軽トラオヤジは凄い権幕で絡んできます。
行き交うクルマの運転席からも、不思議そうな視線が集まりはじめました。
「おまえ、私有地にズカズカ入り込んでいるじゃねえか」
オヤジは私有地への不法侵入?をひたすら言い募ります。
「いえ、この舗装道は一般道でしょ? ここから畑にカメラを向けていただけですよ」
「うるせえ。立入禁止の看板が目に入らねぇのか!」
看板?あたりを見回しましたが、立っているのは「一時停止」の交通標識だけです。
「公道で写真を撮って何が悪いんです?」
「リンゴ泥棒がそうやって盗んでいくんだよ。わからねえのか!」
「私は泥棒じゃありませんけど」
「うるせえやつだな。なら警察呼ぼうか」
「ええ、ぜひ警察を呼びましょう」
こちらもドロボー呼ばわりされては引き下がるわけにはいきません。大体、土曜日の昼下がりに、クルマが絶えず行き交う幹道で堂々と路肩のリンゴを盗むヤツがいるでしょうか?
しかし、軽トラオヤジの興奮は一向に収まる気配がありません。
「センサーが鳴ったんだよ。おめえが畑に入ったから鳴ったんだろうが」
「あのねぇ、私は畑には一歩も入っていないんですよ。センサーが道にいる私を感知したんじゃありません?」
「そんなわけはねぇ」
「じゃ、今、撮った写真をお見せしますよ。ほら、これとこれとこれ。わかります?全部、この道路から写したものでしょ。それでも疑うんだったら、今すぐ警察に来てもらいましょうよ」
一眼カメラのモニターにリンゴ畑の写真を1枚ずつプレイバックしてみせると、ようやくオヤジはトーンダウン。
「あんたが悪い人じゃないってのは、わかったよ。ただ、昨夜もここでごっそり盗まれたんだ」
「素人目にはたくさん実が付いてますけどね」
「実があるのは上半分だろ? 手が届く下半分をやられたんだよ」
言われてみれば、たしかに木の下のほうは実がまばらな感じもしますが...。
どうやらこのオヤジ、日夜繰り出すリンゴ泥棒に手を焼いて相当ナーバスになっているらしいんですね。
それにしても、ただ写真を撮影しているだけの人間をつかまえて、問答無用でドロボー呼ばわりはないでしょう。
呆れて言い返す気にもなれません。というより、こんなことでカッカしているオヤジが哀れに思えてきました。
「私はね、あなたが一生懸命作っているリンゴが高く売れて、あなたが儲かってくれたら嬉しいですよ。おいしいリンゴができたら買わせてもらいますから」
同情すら覚えてそう言うと、
「あんたが悪い人じゃないのはわかってんだよ」
ごめんとは言わずにそう繰り返して、最後には、
「これ、持ってけ」
さっき、通りすがりの泥棒に盗まれていると言っていた低い位置のリンゴを3個、鷲掴みにして枝から引っ剥がし、乱暴に手渡すんですね。お詫びのつもりなのでしょう。
こちらが、そのリンゴ。
ドロボー呼ばわりの“対価”を貰うのはイヤでしたけど、それでオヤジの気が収まるならと黙って受け取りました。
軽トラオヤジの観光農園、こんな態度で大丈夫なんでしょうかね?