干し柿と熟し柿...同じ柿なのにこの差が気になる
食べきれないほど実ってしまった庭の柿を吊して作った“熟し柿”()が、触るとプニュリ。ちょうど食べ頃になりました。
すでに干し柿もたくさん干し上がっていて、この頃、我が家のデザートは柿ざんまいです。
面白いのは、この熟し柿と干し柿、同じ渋柿由来なのに見た目が大きく異なります。
熟し柿は、いわば柿の実が“腐る過程”でほどよく柔らかくなったものですから、柿の姿形を留めています。
一方の干し柿は、茶色くシワシワに萎んでしまって、ルックス的には相当、劣後した印象です。
外見だけではありません。食べ物としても風味がまるっきり別物なんですね。
ご存じのように干し柿は、外が固くて中しっとり。乾燥度合いにもよりますが、外側のゴワッとしたところを噛みしめると、柔らかい果肉に到達します。硬から軟へのグラデーションが味わいどころですよね。
その点、熟し柿はまったく違います。薄い皮を剥くと、中身はジェル状になった柿の実がトロ~リトロトロ。スプーンですくって頬張ると、まさにジャムなんです。香りはほとんどしませんが、何とも言えない濃厚な甘みが口腔に染み渡ります。
考えてみれば不思議です。渋柿を寒風と天日に曝しておく点では、どちらもまったく同じ製造プロセス。なのに外皮を剥いて干すかそのまま干すかの差だけで、できあがりがこれほど違ってくるとは。
渋柿って、なかなか奥深い食材なんですね。