バーベキューハウスにスズメバチの巣が!兼業バスターに来てもらう
我が家のバーベキューハウスの屋根の内側に、直径30センチ以上もあろうかというスズメバチの巣ができていました。
最近、やけにスズメバチがブンブン飛び交うな、と思い、あたりをキョロキョロ見回してみたら、あったんです。こんなに近くに。
灯台もと暗し。夏の間、さんざんステーキやらとうもろこしやらを焼いていたのに、まったく気づきませんでした。
ほんの少し視線を上げるだけで、間違いなく視界に入ったはずです。何しろほとんど頭上と言っていい位置にあったんですから。
つくづく人間は食欲に駆られると何も見えなくなるんだな、と思い知りました。
しかし、困りました。今回の宿主は超攻撃的な性格で知られるキイロスズメバチ。そばを歩いただけで刺されるほどの危険な存在です。
とてもじゃありませんが、素人には太刀打ちできません。
地元紙に「スズメバチ駆除」の三行広告が出ていたのを思い出して電話すると、とある個人名の広告主から「日暮れまでには行けます」と頼もしい返事が返ってきました。
待つこと3時間。中年の男女二人がクルマで到着しました。
二人は兄妹で、兄が駆除担当、妹は運転と会計を担当しているそうです。
揃って現場を遠巻きに観察するうち、
「うわ、キイロスズメバチだ。私、イヤだ。クルマで待ってます」
そう言って妹さんは早々と車内に閉じこもってしまいました。
聞けば7年前に兄と向かった現場でキイロスズメバチに一刺しされた跡がなかなか癒えず、ケロイド状に残ってしまったんだそうです。
顔をしかめて見せてくれたのが、この傷跡。う~む、恐るべし、キイロスズメバチ。
私たちがそんな話をしている間にも、兄はバーベキューハウスの下にそっと脚立を立てて巣の寸法を測り、見積書を書き上げていました。
「直径30センチ以下で地上2メートル以下にできた巣の場合ですと、2万円が標準料金なんですが、この巣はすでに40センチを超えています。高さも2メートル以上あるので、作業代金は3万5200円になります。よろしいですか?」
よろしいも何も選択の余地はありません。危険手当込みと考えれば、妥当な額でしょう。すぐに退治してくださいとお願いしました。
兄は分厚い革製の手袋をはめ、自家製だという防虫ネットを被ってスタンバイ。脚立に登り、市販のハチ用殺虫剤を巣の真下に向けると、出入り口の穴めがけて一気に噴射しました。
次の瞬間、今まで聞いたことがないような重低音の羽音がゴウゴウと周囲に響き、おびただしい数のハチが巣から飛び出してきました。
兄は一心不乱に穴の中めがけて殺虫剤を噴霧し続けます。
1本目の缶を使い切ると2本目に持ち替え、今度は球形の巣全体に届くよう、入念に吹き付けました。
「逃げた奴らが戻って来るから、しばらくその場で頭を低くしていてください」
巣をのぞき込もうと立ち上がった私を兄はそう押しとどめて、周囲を飛び回るハチに正確に殺虫剤を吹きかけていきます。
30分ほど待ってから、厚手のビニール袋を広げ、脚立に乗って巣にすっぽり被せた兄。カッターで巣を付け根から素早く切り離し、ビニール袋にスポンと受け止めました。
口を押さえて、中に殺虫剤を吹き込みます。念のためその上からもう1枚、ビニール袋を被せて作業完了。
ムダのない作業手順に感心して尋ねると、本業は農家なのだと教えてくれました。
「ニホンミツバチを飼っていたんですけど、スズメバチのヤツに食われる食われる。腹が立ってスズメバチ狩りを始めたのが発端なんです」
今では立派な副業になっているそうで、1シーズン数十件の依頼があるんだとか。この日も我が家が3軒目でした。
大きな袋をクルマに積み込んで、颯爽と引き上げる兼業スズメバチ・バスター。本当に助かりました。