子供が減っておサルが増えちゃった

これは白馬村の青鬼(あおに)地区で見かけた「熊注意」
今年は全国各地でクマによる被害が多発しています。
夏に異常な暑さが続いたせいで主食のドングリの生育が遅れ、冬ごもりを前に焦ったクマたちが里まで降りてくるため……と言われています。また去年がドングリの豊作年だったせいで、その反動で今年は実のなり具合が少なく、クマが困っているとも聞きました。
安曇野の大町市でもクマの目撃情報が増えています。9月にはマレットゴルフを楽しんでいたお年寄りが背後から襲われ、軽症を負いました。
たしかに用心に越したことはないのですが、安曇野全体としてはクマ禍よりサル禍のほうが深刻です。
山間部を中心にニホンザルの群れが二手に分かれて移動し、農作物を荒らしています。静岡県三島市で話題になった「噛み付き猿」のように人間に危害を加えることはありませんが、畑や果樹園に侵入して、野菜・果物をどんどん食べてしまうのです。

信州里山.netが運営している安曇野の「ニホンザル情報」ページ
安曇野の大町市、池田町、生坂村の3つの自治体では、このニホンザルの群れを「三日町個体群」と名づけて常時、監視しています。群れの中の数頭に発信器を装着して電波の強弱で居場所を探り、その情報を公開しています。
探査役を買って出ているのは、地元農家のボランティアの方々。毎日、交替で無線機を搭載したクルマで一帯を走りまわり、サルの出没状況をリアルタイムに確認しています。
人間は道路を往復して追尾しますが、サルは文字どおり野原を縦横無尽に駆けまわり、神出鬼没です。こっちの畑のおサルを追い払ったかと思ったら、もう向こうの果樹園に現れて柿の実を頬張ってる…といった具合で、毎日、ボランティアとおサルのイタチごっこが続いています。
地元のおじいさんに聞くと、「つい20年ぐらい前まで、こんなことはなかった」そうです。
「昔は大人も子供も大勢いたからね、サルも恐れて畑になんか顔を出さなかったの。それがこの頃は年寄りばっかりなもんだから、サルも大きな顔してやって来るのよ。人間の子供が減ってサルが増えちゃったんだねぇ」
山間部の人口減少で人とサルの力関係が逆転。畑という名の人間の“ナワバリ”がサルの“荒らし”に遭っているというのです。
過疎化の陰で進む弱肉強食のドラマ。安曇野では頭の痛い問題です。
