ワイン樽にクラシックを聴かせるとおいしくなる?
安曇野~塩尻周辺のワイナリーを訪ね歩くようになって気づいたことがあります。
ワイン樽を寝かしてある地下室に入ると、なぜか決まって蔵の中にクラシックが流れているんですね。
掛かっているのはモーツァルトやハイドン、ビバルディなどの弦楽曲や交響曲。
オペラなどの歌物はまず流れていません。
最初は私たちのような訪問客のためのBGMなのかと思っていました。
でも、先日、桔梗ケ原の信濃ワインの地下にあるセラー(熟成庫)を訪ねた時のこと。薄暗い階段の踊り場に、こんな立て看板があったんです。
地下セラー
このセラーは周りが地下水と小石で取り囲まれているため、クーラーなしでも真夏外気が30度以上の場合も低い温度が保たれ湿度も最適に保たれております。
ワインを長期保存するための条件が三つあります。
一つ目は光が当たらないこと。
二つ目は温度があまり変わらないこと。
三つ目は湿度が60~80%あることです。
このセラーはこの条件を兼ね備え、さらにクラシック音楽を聴かせて、ワイン&ブランデーがゆっくりと時をつむぎ、美味しく熟成されていきます。
乳牛にモーツァルトを聴かせると美味しいお乳が出る、という話は聞いたことがありますが、ワインにもクラシック音楽が効くとは知りませんでした。
しかもこちらのワイナリーでは、1992年から「音楽熟成」を取り入れているんだそうです。
気になって調べてみたら、「音楽振動の酒類への利用」(小松 明)というまじめな研究論文がありました。
それによると、「トランスデューサ(電気-機械振動変換器)によって音楽振動を付与したワインの醸造を、山梨県工業技術センターのワインセンターで行い好結果を得ることができた」そうです。
ワイン樽の底に振動装置を装着してワインに音楽振動を送ると、おいしいワインができあがるらいしいのです。
振動装置を付けなかった樽に比べて、発酵に要する日数が2日間短縮され、糖のアルコールへの転化率が2.5%上昇していたそうです。
また試飲による“官能テスト”でも、「気品のある味と香り」が感じられたとか。
ワインに音楽を聞き分ける“耳”があるのかはわかりませんが、まったく根拠のないことでもなさそうです。
でも、単にワイン樽を音波で振動させるのなら、メタリカやメガデスみたいなヘビメタを大音響で鳴らしたほうが効果的な気もします。
もっともそれじゃ「気品」が備わらないってことでしょうか。ワインだけに優雅なストーリー性が大切なのかも。