苦節9年。古民家の庭先にとうとう彼岸花が咲きました
古民家の庭先に今年、初めて彼岸花が咲きました。
彼岸花といえば田んぼの畦道か墓地の花ということになっていますが、私たちはあの色と形が好きで、かねがね庭の外れに咲かせたいと思っていました。
ですが、地元の種子屋さんや園芸店、ホームセンターを回っても、彼岸花の球根は置いていません。
墓花(はかばな)とか死人花(しびとばな)と忌み嫌われてきたせいなのか、店頭ではほとんど流通していないんですね。
彼岸花の球根には猛毒があって、昔の人は田んぼや墓所を野生動物に荒らされないように、忌避剤として植えたといいます。
そんな先人の経済合理性はいつの間にか忘れられて、不吉な言い伝えだけが残ってしまったのでしょう。
それでも諦めずにネットで探していたら、10年前、徳島県のとある園芸農家が彼岸花の球根を販売していることがわかりました。
当時のお値段で10個525円。それを5セット買い、翌年の秋、庭の外れの崖っぷちに2列に並べて植えました。
1年後、花の付く茎が地面から伸びてくるのを待ちましたが、何も芽吹かず葉っぱも生えませんでした。
2年後、3年後も空振り。生命反応は一切無く、いつしか地面が雑草に覆われて私たちの期待もしぼんでしまいました。
そして今秋。ケヤキの木立の足元から突如、奇妙な緑色の茎が生えてきたなと見ていたら、間もなくあの王冠のような赤い花弁がパチリと開いたんですね。
日当たりは悪いし土壌も痩せています。おまけに冬はすこぶるつきの冷風が尾根伝いに吹き荒れます。
そんな過酷な環境下にありながら、地中で少しずつ体力を付けていった球根。
とっくの昔に腐って無くなったとばかり思っていただけに感激ひとしおです。
死人花は死なず。