11月22日(土)午後10時8分。長野県北部でマグニチュード6.7の地震が発生しました。
その日、ご近所のみなさんと夕方から鍋をつついていた私たちは、たらふく食べて家に帰り、炬燵に潜り込んでうたた寝の最中でした。
突然、ぐわんぐわんと異様な音がしたので瞼を開くと、家全体がガタガタと暴れるような感じで揺れているではありませんか。
「地震だっ!」
眠気は一瞬にして吹き飛びました。膝の上で寝ていたチワワを抱き抱えて炬燵から這い出し、庭に面した広縁(ひろえん)に逃げました。
雨戸に手を掛けて、いつでも脱出できるように中腰で身構えたのですが、揺れはそれ以上大きくはならず、ほどなく収まりました。
その間、わずか1分ほどだったでしょうか。
テレビの速報では「震源地は白馬村付近」と繰り返しています。
しばらくして各地の震度がテロップで表示されました。
最大の震度6弱を記録したのは、白馬村の北に隣接する小谷村(おたりむら)と長野市、小川村。震源地の白馬村と信濃町が震度5強。そして私たちの町は震度4でした。
震度4…にしては横揺れが激しかったような気がします。
体に感じる余震が収まったのを見計らって、家の中をざっと点検しました。
意外にも、どこも何ともありません。強いて言うなら、囲炉裏端に置いてあった「火吹き竹」が床に転がり落ちていたぐらいでしょうか。
結構な揺れだったのに?…と不審に思いつつ、その晩は床に就きました。
地震直後の囲炉裏部屋。囲炉裏端に置いてあった火吹き竹が…
揺れで床に落ちて、階段箪笥(のミニチュア)の前まで転がっていました 翌朝、家の外を見て回ったのですが、やはりこちらも異常なし。わずかに玄関の表札が地面に落ちていたのと、漆喰壁の表面が一箇所、5センチほど剥がれて濡れ縁に落ちていたのが、異変といえば異変でした。
玄関の表札が…
地面に落ちていました。
漆喰壁の表面が…
5センチほど剥がれて濡れ縁に落ちていました。 テレビでは、白馬村堀之内地区の民家が壊滅的な被害を被ったと報道しています。
1階部分が潰れて屋根が地面に載ったような家。菱形に変形して今にも倒壊しそうな家。そんな全半壊の家々に混じって、古民家の多くが原型を留めているのには正直、驚きました。
現地に入った局アナも、
「築150年、200年というお宅は、太い大黒柱と梁に護られて倒壊を免れたようです」
とレポートしていました。
じつは大黒柱があるような古民家=「
伝統的軸組(じくぐみ)工法で作られた家」は、年季が入っても地震に強いと言われています。
以前にも書きましたが、どうやら古民家は2×4に代表される現代的な建築物とは正反対の原理で、地震に対処しているらしいのです。
まとめると、こんな感じでしょうか--
■「伝統的軸組(じくぐみ)工法」で作られた家は、柔らかさと粘り強さで地震を受け流す。建物全体で揺れを吸収し、耐え切れない時には壁が崩れたり、柱が曲がったりしてエネルギーを吸収する。 ■これとは反対に現代の住宅は硬さで地震に対抗する。地震の横方向の力に抵抗する「耐力壁」を設けて地震のエネルギーに持ちこたえる構造になっている。 ■伝統的軸組工法で作られた家は、地震に遭うたびに柱や梁などの軸組み部材の接合部や土壁などが破壊・変形して、建物の耐震性能が低下していくが、その都度、傷んだ箇所を補修すれば耐震性は相応に維持できる。 ■無理な増築だとか、部分的に「耐力壁」を設けて補強などすると、地震の時、その周辺にエネルギーが集中してバランスが崩れ、一気に家が崩壊する恐れがある。 ……なんだか現代のテクノロジーに見放されたような印象もありますが、要は先人の知恵を信じてヘタな手を加えないほうが賢明ってことなのでしょう。
我が家の屋根裏。釘を1本も使わない伝統的軸組工法で作られています。 ちなみに、我が家をリフォームしてくれた地元の一級建築士さんは、以前、こんなふうに言っていました。
「こういう家は、地震の時にいきなりベチャッと潰れたりはしないはずですよ。ゆ~らゆら酔っ払ったように揺れて、その間に逃げ出せるって話です。ただし、シロアリに食われたり、腐ったりしていると耐久力がぐんと落ちるので、家の手入れは怠らないようにしてください」
う~む、たしかに今回の地震でも、我が家の揺れ方はまさに「ゆ~らゆら酔っ払ったよう」でした。逃げ出す時間もありました。
引っ越し当時は、この家で直下型の地震に遭ったら一巻の終わり、と決めつけていたのですが、いやいやどうして案外サバイバルできそうだと勇気が湧いてきました。
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テーマ : 信州
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