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古民家は屋根のメンテナンスも大変です

 我が家は元々、茅葺きでしたが、元のオーナーさんの手によってその上に亜鉛メッキ合板の屋根が被せてあります。

 合板にしてあるのはメンテナンスが簡単だから。錆びないように定期的に塗装し直していけば、内側の茅に傷みが生じにくく、かなり長持ちするといわれています。

 もちろん、合板なんかで覆わずに茅葺き屋根のままにしておくのが理想ですが、今日び茅を葺き替えるとなったら、それこそとんでもなく高くついてしまいます。

 そこで茅葺きはそっとしておいて、上モノの合板を手入れしていくことにしました。

 私たちが家を購入した時点で、亜鉛メッキ合板はすでに20年以上が経過していました。

 屋根表面はほとんど剥げてしまい、赤茶色の地金が剥き出しの状態でした。ところどころに錆も出始めていました。

 さいわい錆が中まで貫通しているところは一箇所もなく、ヤスリで擦り落とせばまだ何とかきれいになりそうな様子でした。

 屋根専門の塗装業者に見てもらったところ、この屋根は過去に一度も補修した形跡がなく、今のうちにメンテナンスしておくべきだと言われました。塗装の跡がないため、塗料が乗りやすくて仕上がりはきれいになるだろう、とのことでした。

 ただし、作業にあたって家の周囲に足場を組まなければならず、その費用がバカになりません。塗料もピンきりだそうで、一回の塗装で15年以上もたせようと思ったら、そこそこのお値段のものを複数回、塗らなければいけないそうです。

 いくつかの業者に見積を出してもらい、条件の良かった松本の業者さんにお願いしました。

 工期は約2週間。屋根がデカイので、費用はざっと130万円近くかかりました。

 以下は業者さんの協力で撮影した屋根塗り替えの一部始終です。


今年8月、塗装前の我が家です
今年8月、塗装前の我が家です

最初に足場を組み……
最初に足場を組み……

表面の洗浄がスタートしました
表面の洗浄がスタートしました

ところどころ、錆が浮いています
ところどころ、錆が浮いています

サンドペーパーでデコボコを削り落とします
サンドペーパーでデコボコを削り落とします

錆を落とした後に下塗りプライマーを吹きつけます
錆を落とした後に下塗りプライマーを吹きつけます

屋根のてっぺんから見たところ
屋根のてっぺんから見たところ

下塗りが終わったら、上塗りの1回目です
下塗りが終わったら、上塗りの1回目です

上から下へ、順に吹きつけていきます
上から下へ、順に吹きつけていきます

飾り屋根の内側に白い塗料で△模様を入れ、ビニールで養生します
飾り屋根の内側に白い塗料で△模様を入れ、ビニールで養生します

軒裏も白く化粧直し
軒裏も白く化粧直し

養生を外すと、つるつるの艶が出ています
養生を外すと、つるつるの艶が出ています

そして仕上げ。2回目の上塗りです
そして仕上げの2回目の上塗りです

翌日、足場を解体しました
翌日、足場を解体しました

今年8月、塗装前の我が家です
赤茶げていた屋根が……

落ち着いた焦げ茶色になって蘇りました
落ち着いた焦げ茶色になって蘇りました

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焼酎ってエライ!渋柿を甘柿に変身させるんです

 我が家の柿の木は渋柿なので、そのままでは食べられません。一部は干し柿にして保存しますが、やっぱり生食もビタミンCが豊富に摂れるし捨てがたいなぁ……というわけで、焼酎を使い渋抜きをしています。

我が家の柿の木は渋柿なので、生食できません


わずか15分間ぐらいのちょっとした工夫で、どうしようもない渋柿が超大甘の甘柿に変身しちゃうんだから感動モンです。

 手順はとっても簡単。以下、ご説明しましょう。


(1)ビニール袋と果実酒用の焼酎を用意する

ビニールは二重にするので2枚、用意します

 ビニールは二重にするので2枚、用意します。

果実酒用の焼酎

 焼酎は柿の数にもよりますが、大きなビニール袋に対して200cc程度もあれば十分です。


(2)柿のヘタに付いた茎を取り除く

写真の○印の部分を除去します

 まず、写真の○印の部分を除去します。

包丁の先でチョチョイと突っつくようにすると、ポロリと外れます

 包丁の先でチョチョイと突っつくようにすると、ポロリと外れます。

ヘタの真ん中におヘソのような窪みができます

 ヘタの真ん中におヘソのような窪みができます。


(3)ヘタを逆さにして焼酎に軽く漬ける

10秒ほど漬けます

 おヘソのような窪みが焼酎に浸るようにして、10秒ほど漬けます。


(4)ビニール袋に実を詰めて焼酎をかける

ビニール袋に実を詰めて焼酎をかける

 ビニール袋に柿の実を詰めて、焼酎をまんべんなく振り掛けます。


(5)ビニール袋を二重にしてきっちり口を結ぶ

ビニール袋を二重にしてきっちり口を結ぶ

 焼酎がこぼれたり、揮発したりしないよう、ビニール袋の口をきっちり結びます。


(6)完成!

常温で放置しておきます

 あとは常温で放置しておきます。4~7日ぐらいで渋味がすっかり抜けて甘柿に変身します。焼酎はよく洗って落とせば後に残りません。アルコールが苦手な方も大丈夫だと思います。

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安曇野は干し柿の季節です

抜けるような青空に柿の実が照り映えます
抜けるような青空に柿の実が照り映えます

 いま、安曇野は干し柿の季節です。あちこちの家の軒先に、ヒモに吊るした柿が下がっています。

 干したての鮮やかな黄色の柿。時間が経ってシワシワ、茶色になった柿。いろいろな段階の柿が美しい飾り物のように軒先を彩っています。

 我が家でも、11月上旬から何回かに分けて渋柿を収穫し、干し柿を作りました。手順はざっとこんな具合です。


(1)渋柿を採る
茎の部分を残して収穫します

 茎の部分を残して収穫します。軽く水洗いしたら準備完了。


(2)皮を剥く
皮を剥く

 ヘタの周囲から下に向かって剥いていきます。


(3)ヒモに結ぶ
ヒモに結ぶ

 地元の農具屋さんやホームセンターに行くと干し柿用のナイロンヒモを売っているので、我が家ではそれを使います。撚ったヒモの間に茎が挟まり、うまい具合にぶら下がります。

 一般的なナイロンヒモの場合は、茎の付け根を軽く結べばOKです。

 カビ防止のため実と実の間隔を適度に空けて、接触しないようにします。


(4)煮沸する
煮沸する

 結んだ実を熱湯に10秒間ぐらい浸けて煮沸。カビ防止のためです。


(5)吊るす
吊るす
左側は2週間前に干したもの。食べ頃です

 軒下の雨がかからない、日当たりの良い場所を選んで吊るします。


(6)揉む
揉む

 1週間ぐらいして外側の皮が硬くなってきたら、指で押すようにして揉みます。こうすると渋が早く抜けて甘くなります。完成までに二度ほど揉みます。


(7)完成!
完成!

 2週間ぐらい経てば、もう食べ頃です。1ヶ月目がおいしいという話も聞きますが、私たちは外側がまだほんのり明るいオレンジ色の頃に食べるのが好みです。

 中身はご覧のとおり。とろ~り大甘です。

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囲炉裏の灰はヤフオクで探しました

10年間使われずにいたため、カチンカチンになっていた我が家の囲炉裏
10年間使われずにいたため、カチンカチンになっていた我が家の囲炉裏

 長年、放置された囲炉裏は、灰がカチンカチンに固まって使いものになりません。

 我が家の囲炉裏も、およそ10年間、火を熾すことなく放っておかれました。いつの間にか灰のカサが減ってしまい、底のほうに赤茶けた石灰質の塊がボソボソと残っているようなありさまでした。

 一旦、すべて掻き出してフルイにかけてみましたが、薄汚れた大粒の灰がわずかばかり採れた程度で、まるで分量が足りません。

残っていた灰をフルイにかけてみましたが、失敗
残っていた灰をフルイにかけてみましたが、失敗

 仕方なく、新品を購入することにしました。

 ところが、どこを探しても「囲炉裏用の灰」は売っていません。「木炭」や「豆炭」「腐葉土」ならホームセンターに山積みされていますが、「灰」の在庫は巷の小売店には見当たらないのです。

 どうしたものかと思案した末に、もしや?と思ってヤフオクを調べたら……あるんですね、これが。

 「囲炉裏 灰」の2ワードで検索をかけると、

 ★「最高級 純木炭の灰 約18リットル」3000円~
 ★「火鉢、囲炉裏に♪茶道具の灰に♪くぬぎ炭100% 純粋木炭灰1キロ」1480円~

 なんて出品がちらほら見つかりました。なるほど、お茶の世界では良質の灰が必要なんですね。囲炉裏愛好家じゃなくても灰のニーズはあるんだと知りました。

 出品者は東北地方や中国地方の林業関係者が多く、廃物利用を兼ねて、燃やした木の灰を段ボール箱に詰めて売っているようです。

 出所の怪しい灰だと、ダイオキシンなどわけのわからないモノが混入している恐れがあります。素性がはっきりわかる出品者を選んで探しました。

やむなくヤフオクで新しい灰を購入
やむなくヤフオクで新しい灰を購入

 私たちが買ったのは、

 ★灰10キロ!木灰!肥料!火鉢!囲炉裏!(落札価格2500円)
 ★木灰(ダンボ-ルに1箱)火鉢・囲炉裏(落札価格2000円)
 

の2種類。どちらもサラサラでキメの細かい白い灰でした。固まってしまった古い灰(の残骸)を捨てたあとに宅配便で届いた2箱の灰をつぎ足し、よく掻き混ぜてみました。

ビニール袋から取り出してパラパラパラ
ビニール袋から取り出してパラパラパラ

 結果は上々。その後、定期的に火を熾すうちに木炭の燃えかすが新たな灰を生んで、囲炉裏の中は少しずつ“豊か”になってきました。

 囲炉裏の再建にはヤフオクで灰を購入するのがおすすめです。

白いきれいな灰で満たされました
白いきれいな灰で満たされました

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「売らない、貸さない」が古民家をダメにする!?

2010年10月17日付の朝日新聞(部分)
2010年10月17日付の朝日新聞(部分)

 福島県下郷町の大内宿を紹介する記事が朝日新聞に載っていました(2010年10月17日)。

 江戸時代の初期に会津藩が整備し、参勤交代にも使った宿場町が往時の姿を留めていて、年間116万人もの観光客を呼び込んでいるそうです。

 街道沿いの45軒のうち33軒は今も茅葺き姿。1981年に国から「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されて以来、9軒が屋根を“茅葺きに戻した”といいます。

 住民たちは「(家屋を)売らない、貸さない、壊さない」という決まりに従って、景観を守り続けていると書いてありました。

 私たちはまだ大内宿を訪れたことがありませんが、古民家(とその保存)にとってはまさに理想郷のような場所だと思います。

 伝統を敬い、次の世代に伝えようという住民のみなさんの絶え間のない努力があればこそ、昔ながらの素朴で美しい佇まいが21世紀の今日に残ったのでしょう。まったく頭が下がる思いです。

 ただ、大内宿のみなさんが遵守してきた掟=「売らない、貸さない、壊さない」は、古民家の保存と継承にとっては“もろ刃の剣”であることも知っておくべきです。

 記事にもありましたが、大内宿では雨が少ない春に、住民が協力しあって茅葺き屋根を葺き替えるそうです。茅葺き屋根が33軒もあるから、共同作業が可能なのです。

 世界遺産に指定された白川郷などもそうですが、国や自治体から「建物群保存地区」に指定されているエリアには複数の古民家が残っていて、まだ辛うじて村落のコミュニティーが生きています。ご先祖様から受け継いだ我が家を「売らない、貸さない、壊さない」ために、住民同士が助け合う環境がどうにかこうにか残っているのです。

 しかし、私たちが暮らす集落のように、もともと山間にポツンポツンと家が建っている場所では例外なく過疎化が進み、村落のコミュニティーは崩壊寸前です。茅葺きの屋根を葺き替えてくれる仲間など、もはやどこを探したって見つかりゃしません。。

 そんな限界集落で「売らない、貸さない、壊さない」の掟を守っていたら、どうなるでしょう? 古民家は時の流れゆくままに「壊れていく」のです。

 実際、私たちは信州のあちこちで「売らない、貸さない」古民家が「壊れていく」姿を目の当たりにしてきました。

 公の保護の手が及んでいる「建物群保存地区」はむしろ例外的存在です。全国規模で古民家の将来を考えるなら、

 売るべし、貸すべし、生かすべし

 を推進してほしいと思います。

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手頃な古民家がなかなか売りに出されない理由

安曇野の廃屋になった古民家
安曇野の廃屋になった古民家

 「古民家の再生や保存は広まっているの?」の項でも書きましたが、都会モンが住みたくなるような“様子のいい”古民家は、じつはなかなか売りに出されません。

 築100余年の趣のある民家が、あっけなく建て壊されて更地に戻ってしまったり、増改築を繰り返しているうちに原型をとどめない異形の建築物になったりといったケースが多く、オリジナルの素朴な姿で残っている古民家は意外に少ないものです。

 たまさか古き良きたたずまいをとどめる古い民家が見つかったとしても、何年も放ったらかしにされていて、屋根が抜けたり壁が崩落していたり…もはや人が住める状態じゃないことも多いのです。

 私たちの暮らす安曇野でも、古民家の売り出し物件はそんなに多くはありません。周辺を歩くと空き家の古民家がちらほら見つかります。でも、大半はボロボロ。朽ち果てるに任せているのが現状です。

もはや手のつけようもありません
もはや手のつけようもありません

 なぜでしょうか?

 理由は簡単です。地権者が売りたがらないからです。

 古民家に長年、一人暮らしを続けてきたおじいさん、おばあさんが亡くなると、土地と家の所有権は子供たちなど親族に移ります。かつて大家族で暮らしていた子供たちは、都会に出たり、里に降りたりして、今では集落に戻ってくるのは盆暮れぐらいです。

 しかし、おじいさん、おばあさんが亡くなったのを機に田舎へ帰ろうという人は、ごくひと掴みです。農業で食べていくのが難しい昨今、ほかにめぼしい仕事のない集落へ家族を伴ってUターンするのは大変なリスクを伴うからです。

 となると、田舎の家屋敷は売るか、売らずに放っておくしかありません。この時、「売る」という選択をしてくれれば、手頃な古民家が中古物件市場に流れます。所有者の世代交代が進んで、古民家の再生や保存にも広がりが出てきます。

 ところが、実際には“塩漬け状態”になる物件が大半です。なぜ、子供たちは田舎の古民家を手放さないのでしょうか?

 よく言われるのは、

 (1)田舎の人は土地への執着が強く、おいそれと手放さない。

 (2)土地を手放すと近所から「貧乏した」と言われるため、売るに売れない。

 といった説明です。

 ある意味、当たらずとも遠からずと思うのですが、ではどうして、田舎の人は土地に執着するのでしょう? なぜ、土地を売ると周囲から後ろ指を指されるのでしょう?

 私たちが地元の方々に聞いたところでは、(1)のいちばんの理由は「そこにお墓があるから」らしいのです。

 ご存じのように、安曇野は道祖神で有名です。ちょっと歩けば、道端にかわいい双体道祖神が見つかります。ですが、じつを言うとその道祖神の何倍もお墓があるのです。安曇野は--安曇野に限らず日本の農村地帯は--どこを歩いてもお墓だらけです。

信州の典型的なお墓。田畑の脇や裏山にあります
信州の典型的なお墓。田畑の脇や裏山にあります

 新しい墓石の奥に、縁が摩耗した昔の墓石が重なるようにして立っています。明治や江戸時代、さらにはもっと古い時代のご先祖様の墓が風雪に耐えて苔蒸しています。

 これらの墓場は家の敷地の外れにあって、そこでは最近まで土葬が行われていました。おじいさん、おばあさんの代ぐらいまでは、亡くなると村の男衆が墓場の空いたところに穴を掘って、亡骸を埋めて弔ったそうです。

 私たちの住んでいる一帯でも、20世紀の終わりぐらいまでは土葬の習慣が残っていたといいます。わずか10年ほど前の話です。

 つまり、先祖代々の“お骨”が相当量、家の外れや集落周辺に埋まっているわけです。ご先祖様を置き去りにして土地を他人に譲り渡すことはできない相談なのです。

古いお墓や磨耗したお地蔵さん
古いお墓や磨耗したお地蔵さん。この下にご先祖さまが埋葬されています

 また古民家が残っている農村地帯は、地目が「農地」や「原野」だったりすることが多く、固定資産税が安いのが特徴です。売らずに持ち続けていても税金はほとんど(あるいはまったく)かかりません。

 維持のための経済的負担が軽微なのに、それでも手放そうとすれば、集落の人たちから「墓守を放棄した」「ご先祖様を疎かにした」と白い目で見られます。「心が貧しくなった」というわけです。(2)の「貧乏した」とは、目先のお財布の中身のことばかりではなくて、じつはそのような“心の貧しさ”をも指しているらしいのです。

 かくして古民家は空き家になってもなかなか売りに出されず、集落では過疎化が進み、一帯は草深い広大な“墓所”へと淋しげに変貌していきます。

 先祖を大切にする日本人の美しい心…意外にもそれが集落の墓場化につながっているというのです。

 古民家保存の道のりは険しいというほかありません。

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古民家の再生や保存は広まっているの?

安曇野の廃屋
安曇野の廃屋

 2010年7月31日(土)付の朝日新聞「天声人語」に、古民家鑑定士の資格を作った井上幸一さんを紹介する文章が載っていました。その中に、

 ▲古い民家の再生や保存が広まっている。

という一文があったのが、ちょっと気になりました。

 本当でしょうか? 過去1年間、信州の古民家物件をあちこち見て回った私たちの印象とは、かなりかけ離れた認識に思えたからです。

 誤解のないように説明しておきますが、これは井上さんがおっしゃった言葉ではありません。朝日新聞社の社員である天声人語の筆者の“所見”です。

 たぶん「古い民家の再生や保存が広まってほしい」という願いが筆者の根っこのほうにあって、きちんと調べずに書いたのだと思います。動機が善意に拠って立つようですので、けしからんとか間違っているとか言うつもりはありません。ただ、その認識はちょっと甘いんじゃないの?…と思うのです。

 そもそも、古民家の再生や保存に関する全国的な統計とかデータとかいうものは存在しません。再生や保存が広まっているかどうかなんてことは、数量的には捉えられないはずです。

 となると、実態は古民家の現場を歩いて知るしかないのですが、たまたま過去1年間、家探しをして信州各地を回った私たちは、古民家が再生されたり、保存されたりする麗しい光景に出くわしたことはただの一度もありません。事態はむしろ正反対でした。

 △古い民家の再生や保存は進まず、伝統家屋は存亡の危機に瀕している。

 というのが、より現実に近い認識じゃないかと思います。

 かつて都市部にあった古民家はほとんど新建築に建て替えられ、姿を消してしまいました。いま古民家が残るのは過疎化の進む農村地帯です。

 信州の農村部をドライブしていると、茅葺き屋根の家や、茅葺きの上にトタンを被せた古い家がポツポツと建っている村落を、まだところどころに見かけます。

 近づいてクルマのスピードを落とし、外側から眺めてみるだけで、つぎのようなことがわかってきます。

 ●昔ながらの古民家の原形をとどめている建物ほど、空き家であることが多い。

 ●人が住んでいる家は増改築を繰り返して、すでに原形をとどめていないことが多い。

 ●オーソドックスな古民家に手を加えて、原形に近い形で再生した建物はほとんど見当たらない。

 つまり信州各地を歩く限り、古民家再生や保存のお手本となる事例はあまり見つからず、逆に朽ち果てるにまかせている伝統家屋の無残な姿ばかりが目につくのです。

 考えてみればこれは当然のなりゆきかもしれません。伝統的な日本の家屋は夏は涼しいが冬寒く、全室和室で洋風生活になじみにくく、火事に弱いという致命的な弱点を抱えています。再生や保存なんてことより、更地に戻して一からツーバイフォーで新築したほうが、どんなにか住みやすいことでしょう。

 新築する費えがない場合は、次善の策として増築や改築を施し、洋間や水回りを現代風に付け足すのが現実的な対処法です。大昔に建った民家でも、継ぎ足し継ぎ足ししいけば、それなりに住みやすい我が家にバージョンアップしていきます。

 ただし、屋上屋を架すたびに家はフランケンシュタイン化して、見た目にも、また構造的にももはや「伝統的軸組(じくぐみ)工法」で作られた家ではなくなっていくものです。

 家屋は生活の場ですから、フランケンシュタインだろうが何だろうが快適ならまったく構わないと思います。不便を耐え忍ぶより合理的に、安全に暮らすべきです。でも、古い民家の再生という観点からすると、確実に方向性がズレていきます。

 では、更地に戻してツーバイフォーで建てる資金も、増改築の予算もない場合はどうなるでしょう? 残念ながら放っておくしかありません。

 信州では、一人暮らしのおじいさんやおばあさんが亡くなり、都会や里へ出てしまった子供たちが田畑と一緒に古民家を相続したものの処分に困って、そのままにしているケースが多いようです。

 放置された古民家は風雨にさらされて、やがて朽ち果てます。屋根が抜け雨水が流れ込んで、今にも倒壊しそうな古民家を見ると、胸が張り裂けそうな気持ちになってきます。

 古民家を相続した遺族が早めに手放す覚悟を決めて売りに出してくれれば、程度のいい建物が次のオーナーに渡り、再生や保存につながります。しかし、遺族が処分を後回しにしたために建物の老朽化が一気に進み、解体するしかなかったというケースのほうが圧倒的に多いようです。

 古民家の再生と保存を本気で考えるなら、公が税法上の優遇措置などの施策を取っていく必要があるのではないでしょうか。信州の現状を見る限り、そういう時期に来ていると思います。

倒壊寸前です
倒壊寸前です

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ラズベリーやムラサキシキブが色鮮やかに実っています

 安曇野では草木が実りの季節を迎えています。

 栗は終わりましたが、柿の木がたくさんの(渋柿の)実を付けています。

 我が家の庭にも、小粒ながら近づいて観察すると色鮮やかで愛らしい実があちこちになっています。

 いくつかご紹介しましょう--

 食べられる実の代表はラズベリー(キイチゴ)。今年、苗を4本植えたのですが、すくすく育って甘酸っぱい実を付けてくれました。

ラズベリー(キイチゴ)
ラズベリー(キイチゴ)

 後は食べられない実です。ムラサキシキブは葉が落ちて、紫色の茎と実だけが残っています。

ムラサキシキブ
ムラサキシキブ

 イチイ(オンコ)の雌木に大粒の実がいっぱいなっています。ヤマガラ(かつて神社の境内でおみくじを引いていた、あの野鳥ですね)がやってきて、果肉をつついて種を採っていきます。

イチイ(オンコ)
イチイ(オンコ)

イチイの実をつついて中の種を採るヤマガラ
イチイの実をつついて中の種を採るヤマガラ

 こちらは、木陰の地面から30センチぐらいのところにヒョロリと1本だけ生えているマムシソウの実。サツマイモのような色の胴体に朱色の実がブチブチと張り付いた、かなり毒々しい姿が個性的です。

マムシソウの実。毒々しくて思わず目が吸い寄せられます
マムシソウの実。毒々しくて思わず目が吸い寄せられます

 紅葉樹が葉を落としきる頃、これらの草木の実も終わりになります。

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北アルプスが雪化粧を始めました

高い峰から順番に降雪が始まっています
高い峰から順番に降雪が始まっています

 この2週間で北アルプスの峰々はつぎつぎに雪化粧を始めています。朝晩がめっきり冷えてきました。

 紅葉は去年に比べると1週間ぐらい遅れていますが、それでも東山(安曇野の東側に連なる低い山々の総称です)の頂上あたりから順繰りに、鮮やかな紅葉前線が里へ下りつつあります。

 お日様に照り映えた紅葉が、道祖神をやさしく包み込んでいます。

我が家の道祖神も紅葉に包まれています
我が家の道祖神も紅葉に包まれています

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安曇野に七色大ムカデが出現!?

大峰高原の大カエデ案内看板。紅葉シーズンに町が立てています
大峰高原の大カエデ案内看板。紅葉シーズンに町が立てています

 東京の友人が19歳の息子Kくんを連れて紅葉狩りにやってきました。

 金曜日の深夜に中央道~長野道を走って、日付が土曜日に変わった直後、豊科インターを降りて安曇野に到着。週末1000円料金が適用されて、お得なドライブになったそうです。

 我が家に着いたのが午前0時過ぎ。それから酒盛りが始まって、大人たちは明け方まで大騒ぎをしました。

 未成年のKくんは早めに寝床に就き、早朝、まだあたりが薄闇に包まれている頃、ひとりで散策に出かけました。

 月明かりを頼りに山道をテクテク歩き続けていたら、朝靄に包まれて何やら大きな看板が路肩に立てかけてあるのが目に飛び込んできました。

 「大峰高原 七色大ムカデ」

 縦長の白い看板に血の滴るような赤い字で、大きくそう書いてあったそうです。

 「ヤバイ……熊注意かと思ったら、大ムカデだってよ。刺されないように気を付けて歩かなくちゃ……」

 今年は熊が出没していると聞かされていたKくんですが、まさか「七色大ムカデ」なんてモノがいようとは思いもしませんでした。

 不意にムカデに飛びつかれないよう、道の真中をおっかなびっくり歩いていると、数百メートル先に、また看板が。

 「大峰高原 七色大ムカデ」

 歩くほどにムカデ注意の看板がつぎつぎに目に入り、いよいよ恐ろしくなったKくんは、早朝散歩を早々と切り上げて我が家に逃げ帰ってきました。

 その日の午後、大人たちと一緒に紅葉狩りに出かけたKくん。大峰高原に上る坂の路肩に例の看板が立っているのを見かけ、思わず顔をしかめていると、同乗する大人たちが、

 「さあ、もうすぐ七色大カエデに到着だよ」

 と言うではありませんか。

 「ええっ、大カエデなんですかぁ? オレ、てっきり七色大ムカデかと思ってました。あ、本当だ。『七色大カエデ』って書いてある。よかった、刺される心配ありませんね。オレ、安曇野って結構、危ないところだなって不安になっていたんですよ」

 安曇野に大ムカデはいません。大カエデが紅葉の見頃を迎えています。

たしかに薄暗がりでなら「七色大ムカデ」に見えなくもないかも
たしかに薄暗がりでなら「七色大ムカデ」に見えなくもないかも

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プロフィール

あづみ

Author:あづみ


都会から安曇野の古民家に親子3人で移住しました。夏涼しく、冬は想像を絶する寒さですが、ハラを括って暮らせば何とかなるものです。

その後、縁あって畑付きの田舎家をゲット。現在は山中の古民家と里の家とを行き来する日々です。

安曇野に興味のある方、また古民家に暮らしたいと思っていらっしゃる方、よろしかったらお立ち寄りください。

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