三九郎(サンクロウ)を知っていますか?
三九郎(サンクロウ)を知っていますか?
松本から安曇野一帯に残る正月の伝統行事です。全国的には「どんど焼き」「どんと焼き」の名前で知られる火祭りと同じもので、刈り取りの済んだ田んぼなどの平地に竹などの長い棒でティピ状のやぐらを立て、そこに年初に飾った注連飾りや書き初めの紙、目を入れたダルマなどを持ち寄って焼くイベントです。
1月9日、松川村の安曇野ちひろ公園で昔ながらの三九郎を再現すると聞いて出かけました。
広場の中央に高さ6メートルもある特大のやぐらが出来上がっていました。昨年末に、地元の人たち20名ほどが協力して、山から切り出したヒノキ5本を円錐状に組んで支柱にし、25本の横棒で骨組みを作ったそうです。その上にワラを掛け、サワラとヒノキの葉で全体をびっしり覆うのが松川村の伝統なんだとか。
内部には4畳ほどの空間があり、昔の子供たちはそこでカルタ遊びをしたり、餅を焼いて楽しんだそうです。
遠目には巨大なクリスマスツリーのようですが、てっぺんにあるのは★のオーナメントではなく大きなダルマさん。やぐらの外側にも大小数十個のダルマがぶら下がっています。
「億万長者」としたためた書き初めが貼ってありました。書き初めを燃やすと字が上手になると言われています。
そしてこちらが米粉で作った団子「繭玉(まゆだま)」です。柳の枝に刺して三九郎の残り火で焼いて食べ、無病息災の祈願をします。子供たちにとっては年の初めの楽しいおやつ大会なんですね。
スタッフが用意してくれた繭玉を1本100円で買い、私たちも参加させていただくことにしました。
行事の始まりは道祖神へのご挨拶から。広場の外れの双体道祖神像にローソクを立て、全員で二礼二拍手一礼します。その火を村の年男、年女が提灯に移してやぐらに運び、火を放つんですね。
やぐらの内側のワラに火が点くと一気に炎が立ち上り、白煙とともに激しく燃え広がりました。
時折、パン!と爆竹のような音とともにダルマが地面に跳ね落ちます。文字通り「火ダルマ」になって地面を転げ回るので、うっかりそばには近づけません。
ものすごい火勢でみるみるうちにやぐらの外側が燃え落ちました。黒焦げになった5本の支柱は消防団員の方々が倒して脇に避け、燃えさかる葉を平らに押し広げていきます。
その様子を繭玉の枝を握りしめた子供たちが見守っています。
火が落ち着くまでの間、村のみなさんが振る舞ってくださるお汁粉を食べて待ちました。
点火から40分ほどして、ようやく火元に近づくことができるようになり、繭玉焼きが始まりました。
気温は8度ほど。手袋を脱ぐと少し冷たいぐらいです。でも、熾火になってきたとはいえ、火のそばへ柳の枝を寄せると手のひらがカッカと火照ってきます。
30分ほどかけて繭玉を1つずつゆっくり焼き、口に放り込んでいきました。ふわりとかすかに甘く、極上のうまさです。童心に帰ってとことん楽しませていただきました。
松川村のみなさんの心からのおもてなしに感謝、感謝の三九郎でした。