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郵便受けに「古民家買います!」のチラシが

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 郵便受けに厚手のチラシが投函されていました。

 ハガキ2枚分の大きさで、表に古民家のカラー写真が載っています。

 どことなく我が家に似たたたずまいの古民家です。

 写真の上には、

  山林・畑・宅地
  中古住宅・畑付古民家…


 と、いくつかの単語がキーワードっぽく羅列してあります。

 写真の右側半分は、物件を「ります」「います」の書き込み欄です。

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 裏を返すと「北欧ハウス工業」という会社行きの料金受取人払郵便ハガキになっています。

 裏側にも囲炉裏の写真が1点。その両側に縦書きでキャッチフレーズがプリントされています。

  夢のスローライフ、
   当社がお手伝いします。

  売りたい方・お探しの方

  ご一報下さい!

 どうやら古民家に力を入れている不動産屋さんの広告のようです。

 この家に暮らし始めて数年が経ちますが、「古民家買います」のチラシが投げ込まれたのは今回が初めて。へぇ、こんなところにまで営業マンが食指を伸ばしているのか…と、ちょっぴり感心した次第です。

 チラシを眺めているうちに好奇心が湧いてきました。悪いなぁと思いつつ冷やかしの電話をかけてみることに。

 --我が家のポストに御社のチラシが入っていたんで電話させてもらいました。古民家って、そんなに人気なんですか?

「はいはい、そこそこ人気ですよ」

 --我が家の周りで古民家に住みたいという人はいませんけど…。

「地元は売りたい方のほうが多いんでね。じつは東京、名古屋、大阪方面の人からの問い合わせが結構多いんですよ」

 --ウチは安曇野の山の中ですけど、御社の営業マンさんが古民家を見つけてチラシを入れて歩いていらっしゃるわけですか?

「はいはい。私どもの会社では、だいたい糸魚川あたりから小谷、白馬、大町、松川、池田、安曇野一帯で、古民家を見つけると『売ります買います』のチラシをポスティングさせてもらってます」

 --チラシの反響はありますか?

「はいはい。お宅さまのようにチラシをご覧になって、古民家を売りたいとおっしゃる方が結構いらっしゃいますよ」

 --どんな古民家が売れるんですか?

「これは一概には言えませんがね、梁が太いかとか、敷地が広いかとか、いろいろですね。ただ、長く空き家だったりすると屋根や床が落ちていて修繕が必要な場合があるからね、そういう家はちょっと買い手がつきにくいね」

 古民家ブームは過去のものとばかり思っていましたが、今もスローな古民家を探す都会人は引きも切らないようです。

 電話を切ってから、大事なことをひとつ聞き忘れたのに気づきました。

 この不動産屋さん、なぜまた社名を「北欧ハウス工業」というのでしょうか? 「信州ハウス工業」にしたほうが、名が体を表しているような気もするのですが…。ま、余計なお世話ではありますが。

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信州の古民家の価格相場は?

 古民家ブームが去って20年あまり。往時に比べると物件価格は半値から数分の1に下落しました。

 現在、信州一円の古民家のお値段は、ざっと次のような相場感です。

 【 ~200万円】
  廃屋か廃屋に近いあばら屋。とことん手を加えるつもりならそのまま住めなくもない。
  移築・再生を前提に解体して古材を再利用する目的で購入する人も。


 【200~500万円】
  程度はまちまちだが、それなりに手を加えるつもりなら魅力的な物件が見つかる。
  ボリュームゾーン。掘り出し物はこの価格帯にある。

  
 【500~1000万円】
  敷地が広い/家の程度が良い/アクセスが良い…など、何かしら取り柄がある。


 【1000万円~ 】
  敷地が広大で大きな畑が付いていたりする。再生済み物件のことも。


 まれに完璧に再生したピッカピカの“元・古民家”で、温泉付きなんていうゴージャスな物件が、安曇野あたりに5000万円以上で売り出されたりしますが、さすがに売れ残ってしまうようです。

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信州某所で見かけた古民家。195万円でした


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古民家は買った途端に資産価値がゼロになる!?

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 古民家に資産価値を求めるのは、土台、無理な話だと私たちは考えています。

 バブル経済全盛期には、古民家が投機の対象になったこともあるようですが、それも瞬間的な椿事に終わりました。

 今、古民家を買おうなんて人は“もの好き”、酔狂以外の何ものでもありません。

 よく新築マンションは買った瞬間に中古物件となり、直後に売ろうとしても2割は値が下がると言われますが、古民家は買った途端に値段がゼロまで急降下すると思ったほうが無難です。

 そもそも、売ろうにもおいそれとは買い手が付きません。我が家の前オーナーは、この家の売却(買い手は私たち)に何と10年もかかりました。

 運良く買い手が見つかったとしても、購入時の半値で売れれば大ラッキー。数分の一か、下手すりゃ数十分の一の値段で手放すのがあたりまえの世界です。

 古民家を買うという行為は、悪く言えば「金をドブに投げ捨てる」、麗しく言い換えるならば「先祖伝来の日本人の心を預かり、守る権利を手に入れる」ことだと思うのです。

 私たちは、ご縁があって手に入れた我が家を“要介護のおじいちゃん”のような存在だと感じています。

 寄る年波で家全体が傾いていますが、それはおじいちゃんが生きてきた証(あかし)。今後、さらに傾いたり、柱が脆くなったりしたら、骨粗鬆症だと思って骨を丈夫にする治療をします。

 万一、シロアリに食われたら、新型インフルエンザに罹ったと思って投薬に踏み切ります。

 でも、新建材やハイテクで甘やかすと寝たきりになってしまう恐れがあります。できるかぎり昔のまま、自然のままの状態で面倒を見て、基礎体力を維持してもらいます。

 そうやって、おじいちゃんの“老いらく”とじっくり付き合っていきたいと思っている今日この頃です。

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床下と屋根裏はかならず目視すべし

最近の建売住宅なんかより、家の状態が一目でわかる」の項にも書きましたが、古民家の“健康状態”は我と我が目で確認し、納得することが肝心です。

 その際、絶対に外せないチェックポイントが床下屋根裏。どちらも簡単に見て回れるはずですから、納得のいくまで観察して、自分なりの診断結果を下したいものです。

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 床下は晴れた日の日中に、できれば家の全方位から潜り込む、または覗き込むようにします。古民家は土の上に束石(つかいし)という平たい石を敷いて、その上に束(つか)と呼ばれる垂直の木材が載っています。人間に喩えるなら束石は靴、束は足です。

 束石が何箇所も外れていたり、束が寸足らずだったり曲がっていたりしたら×。建物の土台がぐらついている証拠です。

 晴れの日なのに床下の地面の一部が濡れていたり、束が黒く湿っているのもダメ。雨水が溜まって腐っている可能性があります。

 シロアリに食われていないかもチェック。拳で叩いてみてボロボロに崩れたり、フカフカしていたら危険信号です。

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 屋根裏は屋根の表面とセットで目視します。萱葺きの萱(=ワラ)が束になって抜け落ちていないか、屋根を支える柱が腐ったり、シロアリに食われていないか。屋根にトタンを張ってある場合は、トタンが錆びて穴が開いていないか。天井裏に雨漏りのシミがないか。

 できれば雨の日に屋根裏に上がって、雨漏りの有無も観察したいところです。大型の懐中電灯を持参して、すみずみまで丹念に見ていきます。

 以上を肉眼でチェックして、まずまず状態が良ければひとまず合格だと思います。古民家を購入後、足回りを直したり、腐った柱を補修したり、あるいはシロアリ退治をしたりするには、バカにならない費用がかかります。躯体に関わるポイントなので、妥協せず観察してほしいと思います。

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購入当時の我が家の屋根。トタンから錆が浮き始めていました

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1年後、足場を組み、大掛かりな塗装が必要になりました

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五感を働かせてよく見る、よく嗅ぐ、よく触る、耳を澄ます

 古民家の“健康状態”は我と我が目で確認し、納得することが肝心です。「最近の建売住宅なんかより、家の状態が一目でわかる」の項にも書きましたが、古民家は屋根裏から床下に至るまで隙間だらけですから、家のすみずみまで我と我が目で全部チェックできるという“利点”があります。

 その際、大切なのは五感を働かせてよく見る、よく嗅ぐ、よく触る、そして耳を澄ますことです。

 古民家は昼でも薄暗いので、強力な懐中電灯をかならず持参してください。天井裏などは懐中電灯をゆっくり、マーカーペンで線を引くように平行に動かして観察します。天袋などは1枚ずつ開けてライトで照らし、内部に隠れている土壁の傷み具合などを確かめます。

 畳や床は足裏で感触を確かめながら歩きます。根太(ねだ)が腐っているとフカフカと頼りない感じがします。柱や壁は手のひらで叩いて手応えを確認します。ボロボロと崩れるようならシロアリかもしれません。今も巣食っているのか、過去の残骸なのか、ニオイを嗅いだり、湿り具合を見たりしてチェックします。

根太が腐っているとフカフカと頼りない感じがします
根太が腐っているとフカフカと頼りない感じが…

 古い建物ですから床鳴りや風切り音は当たり前ですが、耳を澄ますと隙間風が聞こえることがあります。風の音をたどっていくと、意外な場所に大きな穴がポッカリ開いていたり、小鳥や小動物が巣ごもりしていることも。宝探しのようなつもりで、楽しみながら観察するのがコツだと思います。

意外な場所に大きな穴がポッカリ開いていたりすることも
意外な場所に大きな穴がポッカリ開いていたりすることも…

 私たちもそんなふうにして信州各地の古民家を訪ね歩きました。現代の建築と違って、古民家は断熱材も新建材も使っていません。タネも仕掛けもないんですね。ズブの素人にだって、建物の健康状態は一目瞭然です。

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最近の建売住宅なんかより、家の状態が一目でわかる

良し悪しは自分の目でチェックできちゃいます
良し悪しは自分の目でチェックできちゃいます

 テレビの情報番組を見ていると、高いローンを組んで買った一軒家が、じつは手抜き工事のデタラメぐちゃぐちゃ物件だった、という実話が紹介されたりします。

 新築でさえそうなんですから、中古物件--ましてや古民家ともなると、本当に大丈夫なんだろうかと不安になります。

 買ったはいいけど住む前に倒壊してしまったら元も子もありません。地震、雨漏り、シロアリ…本当に、本当に大丈夫なんでしょうか?

 でも、こと家の健康診断という点では、古民家は昨今の建売住宅なんかより全然“明快”なのです。なんてったって屋根裏から床下に至るまで隙間だらけなわけですから、家のすみずみまで我と我が目で全部チェックできちゃうのです。

 新建材も断熱材もなーんにも使っていません。見たまんま、触ったまんまなんですね。素人でもかなりのところまで建物の程度がわかります。

 古民家探しをする方は、ぜひ何軒も見て回って、天井裏から床下まで丹念に観察してみてください。すぐに目が肥えてきて、「こりゃ、ダメだな」「OKなんじゃない?」と、かなりのところまで自分で判断できるようになると思います(私たちもそうでした)。

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古民家、今が買い時?

 古民家のような、かなり特殊な不動産物件に果たして“買い時”があるのかどうか、にわかには判断できません。ただ、「古民家に暮らしたい」と真剣に考えている“もの好き”にとっては、まさに今が買い時だと私は密かに思っています。

 その理由は、おもに次の2点です。

(1)まともな古民家が相当、減ってきている

 戦前の古い日本建築の中で、釘を1本も使わずに材木を組み合わせて建てられた「伝統的軸組(じくぐみ)工法」を古民家と定義した場合、その数は急速に減っています。

 特にバブル時代に建て替えが進んで、都市部や市街地にあった古民家は大半が姿を消してしまいました。今、残っているのは過疎化が進む農村地帯にあるものがほとんどです。

 農村部でも利便性の良い場所に建つ古民家は、建て替えられたり、増改築を繰り返したりして、もはや往時の姿をとどめていないことが多いようです。

 一方、オリジナルに近い形を残した伝統建築は、住みづらさが祟って見捨てられ、空き家化しているケースが目につきます。長年、そこに暮らしていた80代、90代のおじいちゃん、おばあちゃんが亡くなり、主を無くした家々です。

 そんな空き家となった古民家が、最近、ぽつぽつ売りに出されています。程度はまちまちですが、手を加えれば50年、100年は優に暮らせそうな家もあります。

 この先、80代、90代のおじいちゃん、おばあちゃんが集落から完全に姿を消してしまうと、物件としての古民家の供給もストップするのではないでしょうか。

 今ならまだ物件を選ぶことができますが、将来を見据えると、出物は減る一方です。吟味して買おうという方は、今のうちに探してみることをおすすめします。

(2)値頃感が出てきている

 「昔むかし、古民家ブームがあったと…」の項にも書いたとおり、バブル期の古民家ブームの頃に比べて、現在の古民家の値段は半値から数分の一、場合によっては数十分の一に下落しています。

 歴史的価値だとか由来などを一旦脇に置いて冷静に考えれば、古民家とはすなわち、すこぶるつきのオンボロ家屋なわけです。二十数年かけてやっと常識的な価格に落ち着いたというべきでしょう。
 
 気になるのはこの先、さらに価格が下落するかどうかですが、昨今、物件の供給が減り続けている点を考えると、程度の良い古民家は今後、価格が上昇に転じる可能性もありそうです。

 別に慌てて手を出すようなものではありませんが、どうしても欲しい人は今が買い時、かもしれませんね。

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古民家を手放す人とは?

紅葉真っ盛りの我が家です
紅葉真っ盛りの我が家です

 ブームは去ったものの、依然、古民家に住みたいという都会モンの“もの好き”は後を絶ちません。かくいう私たちもそのお仲間でした。古民家は専用サイト等を介してひそやかに、しかし今日も確実に売買されています。

 不動産物件ですから、そこには売り手と買い手がいます。このうち売り手、すなわち古民家を手放す人とは、どんな顔ぶれなんでしょう?


 私は次の2グループに分けられると思います。

 ■先祖伝来の土地に建つ古民家を、万感の思いで手放す人たち …【第一世代】

 ■ブームに乗って購入した古民家を持て余し、売りに出す元都会モン …【第二世代】

 ここでは便宜上、第一世代第二世代と色分けしてみます。

  第一世代は、古民家に長年、一人暮らしを続けてきたおじいさん、おばあさんが亡くなり、その後を相続した子供たちです。すでに都会に出たり、里に降りたりして、集落に戻ってくるのは盆暮れぐらい。郷愁はあるけれど、田舎の田畑・家屋敷を持っていても仕方ない。この際、処分してしまおうか…と思い切って売りに出すケースです。

  第一世代が手放す古民家は、ちょっと前までお年寄りが生活の場にしていた家ですので、空き家と違って傷みが少なく、程度の良さが期待できます。

 逆に長いこと“塩漬け”になった挙句、家も土地も荒れ放題。放り出すようにして手放されてしまったケースもあって、その場合、せっかくの伝統家屋はグチャグチャのあばら屋に成り果てています。

荒れ果てた古民家
荒れ果てた古民家

 いずれにしても、買い取ってから手を入れないと快適な古民家暮らし、田舎暮らしは送れません。

 一方、第二世代はバブル景気に湧いた1990年前後に第一世代から古民家を譲り受けた人たちです。購入当時、40~50代で、それなりに可処分所得のある自営業者が多かったと聞いています。いわゆる団塊世代の方々です。

 これら第二世代の人たちが、購入から20年あまりたって古民家を手放すケースが、最近、目立っています。信州一円でも「再生済み」「リフォーム済み」の物件がちらほら売りに出されています。

 手放す理由はさまざまですが、私が実際に見聞きしたところでは、

 ●別荘として使っていたが、長引く不景気で維持しきれなくなった

 ●土地の人たちと馴染めなかった

 ●年を取り、バリアフリーで冬暖かいマンションに引っ越すことにした

 ●医療や介護のサービスが不安で、都会に戻ることにした


 …といった理由が多いようです。なるほどなぁ、ですね。

  第二世代の古民家は、再生やリフォーム済みであることが多く、程度もそこそこ。購入後のメンテナンスにそれほどお金はかかりません。

 …と言いたいところですが、実際に第二世代の方から今の家を譲り受けた私たちの経験からすると、なんだかんだと手入れが必要で、気がつけば購入価格と同じくらいの費用が別途かかったのでした。

なんだかんだと手入れが必要で、気がつけば購入価格と同じくらいの費用がかかりました
なんだかんだと手入れが必要で、気がつけば購入価格と同じくらいの費用がかかりました

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手頃な古民家がなかなか売りに出されない理由

安曇野の廃屋になった古民家
安曇野の廃屋になった古民家

 「古民家の再生や保存は広まっているの?」の項でも書きましたが、都会モンが住みたくなるような“様子のいい”古民家は、じつはなかなか売りに出されません。

 築100余年の趣のある民家が、あっけなく建て壊されて更地に戻ってしまったり、増改築を繰り返しているうちに原型をとどめない異形の建築物になったりといったケースが多く、オリジナルの素朴な姿で残っている古民家は意外に少ないものです。

 たまさか古き良きたたずまいをとどめる古い民家が見つかったとしても、何年も放ったらかしにされていて、屋根が抜けたり壁が崩落していたり…もはや人が住める状態じゃないことも多いのです。

 私たちの暮らす安曇野でも、古民家の売り出し物件はそんなに多くはありません。周辺を歩くと空き家の古民家がちらほら見つかります。でも、大半はボロボロ。朽ち果てるに任せているのが現状です。

もはや手のつけようもありません
もはや手のつけようもありません

 なぜでしょうか?

 理由は簡単です。地権者が売りたがらないからです。

 古民家に長年、一人暮らしを続けてきたおじいさん、おばあさんが亡くなると、土地と家の所有権は子供たちなど親族に移ります。かつて大家族で暮らしていた子供たちは、都会に出たり、里に降りたりして、今では集落に戻ってくるのは盆暮れぐらいです。

 しかし、おじいさん、おばあさんが亡くなったのを機に田舎へ帰ろうという人は、ごくひと掴みです。農業で食べていくのが難しい昨今、ほかにめぼしい仕事のない集落へ家族を伴ってUターンするのは大変なリスクを伴うからです。

 となると、田舎の家屋敷は売るか、売らずに放っておくしかありません。この時、「売る」という選択をしてくれれば、手頃な古民家が中古物件市場に流れます。所有者の世代交代が進んで、古民家の再生や保存にも広がりが出てきます。

 ところが、実際には“塩漬け状態”になる物件が大半です。なぜ、子供たちは田舎の古民家を手放さないのでしょうか?

 よく言われるのは、

 (1)田舎の人は土地への執着が強く、おいそれと手放さない。

 (2)土地を手放すと近所から「貧乏した」と言われるため、売るに売れない。

 といった説明です。

 ある意味、当たらずとも遠からずと思うのですが、ではどうして、田舎の人は土地に執着するのでしょう? なぜ、土地を売ると周囲から後ろ指を指されるのでしょう?

 私たちが地元の方々に聞いたところでは、(1)のいちばんの理由は「そこにお墓があるから」らしいのです。

 ご存じのように、安曇野は道祖神で有名です。ちょっと歩けば、道端にかわいい双体道祖神が見つかります。ですが、じつを言うとその道祖神の何倍もお墓があるのです。安曇野は--安曇野に限らず日本の農村地帯は--どこを歩いてもお墓だらけです。

信州の典型的なお墓。田畑の脇や裏山にあります
信州の典型的なお墓。田畑の脇や裏山にあります

 新しい墓石の奥に、縁が摩耗した昔の墓石が重なるようにして立っています。明治や江戸時代、さらにはもっと古い時代のご先祖様の墓が風雪に耐えて苔蒸しています。

 これらの墓場は家の敷地の外れにあって、そこでは最近まで土葬が行われていました。おじいさん、おばあさんの代ぐらいまでは、亡くなると村の男衆が墓場の空いたところに穴を掘って、亡骸を埋めて弔ったそうです。

 私たちの住んでいる一帯でも、20世紀の終わりぐらいまでは土葬の習慣が残っていたといいます。わずか10年ほど前の話です。

 つまり、先祖代々の“お骨”が相当量、家の外れや集落周辺に埋まっているわけです。ご先祖様を置き去りにして土地を他人に譲り渡すことはできない相談なのです。

古いお墓や磨耗したお地蔵さん
古いお墓や磨耗したお地蔵さん。この下にご先祖さまが埋葬されています

 また古民家が残っている農村地帯は、地目が「農地」や「原野」だったりすることが多く、固定資産税が安いのが特徴です。売らずに持ち続けていても税金はほとんど(あるいはまったく)かかりません。

 維持のための経済的負担が軽微なのに、それでも手放そうとすれば、集落の人たちから「墓守を放棄した」「ご先祖様を疎かにした」と白い目で見られます。「心が貧しくなった」というわけです。(2)の「貧乏した」とは、目先のお財布の中身のことばかりではなくて、じつはそのような“心の貧しさ”をも指しているらしいのです。

 かくして古民家は空き家になってもなかなか売りに出されず、集落では過疎化が進み、一帯は草深い広大な“墓所”へと淋しげに変貌していきます。

 先祖を大切にする日本人の美しい心…意外にもそれが集落の墓場化につながっているというのです。

 古民家保存の道のりは険しいというほかありません。

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昔むかし、古民家ブームがあったと…

バブル経済全盛期、古民家は右から左に売れたそうです
バブル経済全盛期、古民家は右から左に売れたそうです

 「古民家ブーム」が時代を席巻したのは、いまから20年ほど前、バブル経済の終わり頃でした。

 カネ余りの世相を反映して、キャッシュを握りしめた都会モンが田舎へ田舎へと押し駆け、空き家になった古民家を凄い勢いで買いあさったといいます。

 ブームの波は安曇野にも押し寄せました。当時を知る不動産屋さんの話では、山間部に建つ廃屋同然の民家も、数千万円の売値を付けて店先にチラシを貼っておけば、1ヶ月とたたないうちに売れたそうです。

 買い手は首都圏や名古屋周辺の人で、自営業者が多かったようです。

 とにかく右から左に売れていくので、不動産屋さんも近隣を回って積極的に古民家探しをしたといいます。当時は今より状態のいい建物が残っていたため、「高価格でも確実に売れるから」と渋る地権者を説得。結果として優良物件がそれなりに出回ったそうです。

 インターネットがない時代、“もの好き”な都会モンは出物を求めて田園地帯の旧国鉄駅周辺を歩き回り、不動産屋を見つけると一目散に駆け込んで「古民家ない?」と聞いて回ったといいます。

 でも、バブル崩壊とともにブームはあっけなく終わりました。90年代の半ばぐらいまでは、まだ勘違いして高価格で売り出される家もあったようですが、当然ながら買い手は付かず、塩漬け→荒廃の道をたどりました。

 以来、今日まで古民家の価格は下がりっぱなし。現在は当時の半値から数分の1、場合によっては数十分の一で取り引きされています。

 建築史的な価値だとか由来などを一旦脇に置いて冷静に考えれば、古民家と言ったって、要はオンボロ家屋なわけです。二十数年かけてやっと常識的な価格に落ち着いたといえるんじゃないでしょうか。

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プロフィール

あづみ

Author:あづみ


都会から安曇野の古民家に親子3人で移住しました。夏涼しく、冬は想像を絶する寒さですが、ハラを括って暮らせば何とかなるものです。

その後、縁あって畑付きの田舎家をゲット。現在は山中の古民家と里の家とを行き来する日々です。

安曇野に興味のある方、また古民家に暮らしたいと思っていらっしゃる方、よろしかったらお立ち寄りください。

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