書翰集…超こだわりの親父さん?が淹れてくれるコーヒーがたまりません

安曇野においしいコーヒーが飲めるカフェがある、と聞いて出かけました。教えてもらったのは「カフェ書翰集」というお店です。
ところでこのお店の名前、読めますか? 書翰集…しょかんしゅう、と言うんですよね。
普通は「書簡集」と書きます。誰でも読めるように。
わざわざそれを、知っている人(というか教養のある人)にしか読めないような漢字にするところが、手強(てごわ)いといいましょうか、“ガンコ親父がやってる趣味の店”的なニオイを醸し出しています。
コーヒーはおいしいかもしれないけれど、しんねりむっつりした親父が「なんだつまらない」って顔でギロリと睨み返すような店だったらイヤだなぁ、大丈夫かなぁ…と、多少ドキドキしながら出かけました。
通りから別荘がポツンポツンと建つ雑木林の中に分け入ると、一見、平屋っぽい木造の山小屋風の建物が見えてきます。家の手前には「陶 Cafe 書翰集」という目立たない看板が立っているだけ。これがなければ、完全に見過ごしてしまうくらい地味な構えです。

木の扉をギィィと開くと、正面に二階へ上がる階段。その左脇にカウンター。左横にはテーブルがいくつか並んでいます。
カウンターの中に、白髪混じりの年配のマスターがひとり、コーヒーの粉に黙々とお湯を注いでいらっしゃいます。この方が書翰集の名付け親に違いありません。
うわぁ、やっぱりこだわりの親父さんだぁ!…思わず二の足を踏んでいたら、カウンターの脇に立っていた愛想のよい女性スタッフが、
「いらっしゃいませ。お二階へどうぞ」
と、すぐ上に案内してくださいました。

二階はテーブルが4つ。床の一部が吹き抜けになっていて、天井際には手作りの巨大なスピーカーが左右にマウントされています。そのスピーカーから、モダンジャズが静かに流れています。

手作りスピーカーにジャズ…マスターのこだわりがわかろうと言うものです。
吹き抜けを背に、等身大ぐらいの木彫の裸婦像が立っています。天童荒太の『永遠の仔』や『悼む人』の表紙を飾った、あのキモ恐ろしげな彫像を彷彿とさせる、ちょっと不気味な彫刻です。

お店のホームページによると、これは地元の彫刻家・片桐克彦氏の『羅』という作品。ウッディな空間にマッチした卓抜な配置に感心しました。

窓の向こうに安曇野の林が広がり、テーブルの上にやわらかな陽光か降り注ぎます。なんだかヨーロッパの僧院の食堂のような禁欲的な雰囲気です。
これとは別に二階には、三方を書架に囲まれた「図書室」があります。こちらには1500冊あまりの本が置かれています。店名の書翰集は、この図書室にちなんだものでしょう。自由に本を手に取っていいそうです。コーヒーを飲みながら心ゆくまで読書するための、最高の空間です。
メニューを見ます。コーヒーは「軽くスッキリしたタイプ」「中濃タイプ」「濃厚タイプ」「特殊なタイプ」「エスプレッソ」「その他」に分かれています。
「軽くスッキリしたタイプ」から「特殊なタイプ」まではドリップコーヒーで、一律500円。
私たちは「濃厚タイプ」の「マンデリン・スマトラタイガー@インドネシア」を注文しました。
他に洋梨のタルトとマフィンサンドを頼み、待つこと少々。ご覧のようなコーヒーと軽食が運ばれてきました。

まず驚いたのはコーヒーの馥郁(ふくいく)たる香りと味。生豆の選別から自家焙煎まで、こだわり抜いて作っているというだけあって、大変、美味なのでした。
タルトとマフィンサンド(具にゴボウが入っていたのがヘルシー)も、大変おいしくいただきました。


コーヒーをお替わりして、持ってきた本を読み読み、長っ尻を決め込んだ私たち。
読書のために長居をしても追い立てられることがなく、ちょっと取っつきにくそうなマスターも階下におられるので直接、顔を合わせる必要もありません。じつに居心地の良いカフェでした。
ときどき本を携えて寄ってみようと思います。



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