階段が急勾配なのは昔の人の足が小さかったから?

「古民家の階段はどうして急勾配なんだろう?」の項で、昔の日本人は「急な階段のほうがいい」と本気で思っていたのではないか?…ということを書きました。
そのいちばんの理由は「足のサイズがとても小さかったから」ではないか、と近頃、思うようになりました。
調べてみると、日本人の体格がもっとも小さかったのは意外にも江戸時代~明治初頭なんだそうです。
社団法人日本酪農乳業協会という団体のホームページに、縄文時代から現代に至る女性の平均身長を比較した面白いグラフが載っていたので、ここに転載させていただきます。

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日本人の身長の変化(女性)
●縄文~弥生時代は、各地域の平均推定身長
●古墳~江戸時代は、関東出土の人骨より算出
●明治33年以降は、文部科学省(旧文部省)の生体計測資料より
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これを見ると、江戸時代の女性の平均身長は143センチだったことがわかります。一世を風靡したアイドル・ユニット「ミニモニ」の矢口サンが145センチ、加護チャンが147センチ、辻チャンが148センチだったそうですから、江戸時代の女の人はミニモニよりさらに小さかったわけです。
では、身長が143センチの日本人の足のサイズはいくつかというと、「くらしとJISセンター」というところが集計した「人体寸法個人データ」という資料から、およそのことがわかります。
このデータは、日本人の青年男女217名(男110名、女107名)の人体のいろいろな部位を実際に測ってまとめたものです。
そこから足のサイズを拾い出して見やすく整理したサイトがあったので、そちらを参考にさせてもらいました。
それによると、身長142.5~147.4センチの女性の足長は、平均21.8センチ。
築150年以上の我が家が新築された当時、ここに住む女性たちはミニモニよりも小さく、足もお子ちゃま並に小さかったのです。
男性の身長や足のサイズも推して知るべしでしょう。つまり、江戸時代の日本人にとって、階段の踏面(ふみづら=ステップ部分の奥行き)が深いと逆に上がりにくかったのではないでしょうか。
下の写真は靴サイズ25・5センチの“現代人”の足を踏面に載せてみたところです。踵が半分、はみ出しています。

しかし江戸時代の人たちにはジャストサイズで、これぐらいがちょうど具合がよかったに違いありません。
踏面を浅くして蹴上(けあげ=段差)を多少、大きめにすれば、階段スペースは劇的に少なくてすみます。
江戸時代の人たちは現代人より胴長短足だったでしょうから、階段の上がり下りに大股を開かなければならなかったとは思いますが、足が短いので重心が低く、むしろ現代人より安定して昇降できたはずです。
やっぱり、昔の日本人は「急な階段のほうがいい」と本気で思っていたのだと思います。



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